この記事でわかること
- 部屋を片付ける義務が誰にあるのか、立場ごとにわかる
- 大家から「片付けてください」と言われたときに、応じるべきかどうかがわかる
- 相続放棄をした場合、部屋はどうなるのかがわかる
- 相続人が見つからないときに誰が動くのかがわかる
一人暮らしの親族が亡くなり、部屋に荷物がそのまま残っている。大家さんからは早く片付けてほしいと言われている。でも自分がやるべきなのか、そもそも義務があるのかがわからない。
先に結論を言います。
部屋を片付ける義務があるのは、原則として相続人です。大家でも、連帯保証人でも、発見した親族でもありません。
ただし現実には、相続人が遠方だったり、相続人同士で押し付け合ったり、そもそも連絡がつかなかったりして、連帯保証人が動かざるを得ないケースが多くあります。
そして重要なのは、相続放棄を考えているなら、片付けに手を出してはいけないということです。手を付けた時点で放棄できなくなる可能性があります。
まず、自分に義務があるのかどうかから確かめてください。ここを飛ばして動くと、払わなくていいお金を払うことになります。
相続することが決まったら、部屋の状態を見てもらうところから始まります。特殊清掃が要るかどうかも、その場で分かります。

孤独死した部屋を片付ける義務は誰にあるか
| 立場 | 片付ける義務 | 費用を払う義務 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 相続人 | あり | あり | 賃貸借契約を引き継ぐため。片付けも費用も本来はここ |
| 連帯保証人 | なし | あり | 金銭債務のみ。片付けそのものの義務はない |
| 家賃保証会社 | なし | 契約内容による | 原状回復まで保証する商品もある |
| 大家・貸主 | なし | なし | 勝手に処分すると違法になる |
| 発見した親族 | なし | なし | 相続人でなければ義務は生じない |
| 自治体 | なし | なし | 相続人不明のときに手続きに関与することはある |
ポイントは2つです。
1つ目。連帯保証人には「片付ける義務」はありません。保証人が負っているのは金銭を支払う義務であって、現地に行って荷物を運び出す義務ではありません。ここを混同して、保証人が全部背負ってしまうケースが非常に多い。
2つ目。大家は勝手に片付けられません。部屋の中の物は亡くなった方の財産であり、相続人のものです。大家が独断で処分すると、後から損害賠償を請求される可能性があります。だから大家は相続人を探して「片付けてください」と言ってくるわけです。
保証人の立場で連絡を受けている方は、断れる範囲を連帯保証人に部屋の荷物を撤去する義務はあるかで確認してください。
孤独死した人の相続人は誰になるか
順番が決まっています。
- 配偶者(常に相続人になる)
- 子(いなければ孫)
- 親(子がいない場合)
- 兄弟姉妹(子も親もいない場合。いなければ甥・姪)
上の順位の人がいれば、下の順位の人は相続人になりません。
たとえば独身で子どもがいない叔父が亡くなった場合、親が健在なら親が相続人です。親が亡くなっていれば、叔父の兄弟姉妹(つまりあなたの親)が相続人になります。あなたの親も亡くなっていれば、あなた(甥・姪)に回ってきます。
「近い親戚だから」ではなく、法律上の順位で決まります。遠い親戚が突然「あなたが相続人です」と連絡を受けるのは、この仕組みのためです。
相続放棄を考えているなら、部屋の片付けに手をつけない
ここが最重要です。
民法921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認したものとみなすと定めています。
出典:民法第921条(法定単純承認)|e-Gov法令検索
部屋の中の家具・家電・衣類・現金は、すべて相続財産です。それを片付けて処分する行為が「財産を処分した」と判断されると、相続放棄ができなくなります。家賃の滞納や借金があれば、それも背負うことになります。
親切のつもりで、大家さんに急かされて、といった事情は関係ありません。
孤独死の場合は特に注意が必要です。部屋の状態がひどいと「早く何とかしなければ」という圧力がかかり、判断する前に業者を手配してしまいがちです。まず、借金の有無を確認してください。
相続放棄をしたら、部屋はどうなるのか
放棄した人には片付ける義務はなくなります。
ただし、2023年4月に施行された改正民法940条により、放棄した時点でその財産を「現に占有している」場合に限り、次の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務を負います。
出典:民法第940条|e-Gov法令検索
- (同居していたため)室内の物を現に占有している → 保存義務が生じる可能性がある
- (鍵を預かって出入りしていたため)占有と評価される余地がある → 慎重に判断する
- (遠方に住み一度も立ち入っていないため)占有していない → 原則として義務は生じない
相続人全員が放棄した場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てて、その人が財産を清算します。申立てには予納金が必要で、数十万円から100万円程度かかることがあります。
この費用は、たいてい大家側が負担して申し立てることになります。相続人全員が放棄すれば、あなたが払うことにはなりません。

大家から「片付けてください」と言われたときの判断
まず、自分が相続人かどうかを確認してください。そのうえで次の順に判断します。
① 自分は相続人か
相続人でなければ、片付ける義務はありません。「相続人は◯◯です」と伝えて構いません。
② 相続人だが、借金の有無がわからない
「相続するかどうかを判断中です。判断が済むまで手を付けられません」と伝えてください。相続放棄の期限は3ヶ月あります。大家に急かされても、この期間は法律上の権利です。
家賃が発生し続けることは事実なので、その点は理解したうえで急いで判断してください。
③ 相続人で、相続することが決まっている
片付ける義務があります。ここから業者の手配に入ります。
④ 連帯保証人だが、相続人ではない
片付ける義務はありません。ただし家賃や原状回復費用の支払い義務は負います。
この場合、「費用は保証しますが、片付けは相続人と話してください」という立場を取れます。実務では保証人が業者を手配することも多いのですが、それは義務ではなく、話を早く進めるための選択です。
孤独死で特殊清掃が必要になる場合
発見までに時間が経っていた場合、通常の遺品整理では対応できません。
判断の目安はこうです。
- (体液や汚れが床に到達しているため)フローリングや畳の張り替えが必要 → 特殊清掃
- (臭いが壁や天井に染みているため)消臭・消毒の作業が必要 → 特殊清掃
- (害虫が発生しているため)駆除作業が必要 → 特殊清掃
- 発見が早く、室内に汚れがない → 通常の遺品整理で対応できる
夏場は数日で状況が変わります。管理会社や警察から状況を聞いて、判断してください。自分で確認しに行く前に、必ず状態を聞いておくことをおすすめします。
特殊清掃が必要だった場合の金額は特殊清掃の費用相場、その費用を誰が負担するかは孤独死の原状回復費用は誰が払うのかにあります。
孤独死した部屋を片付けるまでの流れ
- 警察から連絡を受け、遺体の引き取りと死亡届
- 大家・管理会社・保証会社へ連絡
- 相続するか放棄するかを判断する(ここで止まる)
- 相続する場合、賃貸借契約の解約を通知
- 特殊清掃の要否を確認し、業者に見積もりを依頼
- 片付け・原状回復
- 鍵の返却と精算
3番を飛ばして5番に進んでしまう人が非常に多い。ここだけは順番を守ってください。
【FAQ】孤独死した部屋の片付けについてよくある質問
Q. 相続人が複数いる場合、誰が片付けるのですか?
法律上は相続人全員に義務があります。実務では代表者を一人決めて進めるのが一般的です。費用の負担割合は、相続分に応じて按分するか、話し合いで決めます。着手する前に文書で合意しておくと、後で揉めません。
Q. 相続人が誰も名乗り出ない場合はどうなりますか?
大家側が家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てます。選任された清算人が部屋の片付けと精算を行います。時間はかかりますが、放置され続けることはありません。
Q. 大家が勝手に荷物を捨てていました。
原則として違法です。相続人は損害賠償を請求できる可能性があります。ただし契約書に残置物の処理に関する特約がある場合や、相続人が長期間対応しなかった場合は、判断が変わることがあります。争いになりそうなら弁護士に相談してください。
Q. 費用を誰が払うかで揉めています。
本来は相続人が相続財産から支払います。預貯金があればそこから出せます。相続人間で揉める場合は、まず費用を立て替えた人が領収書を保管し、遺産分割の際に精算する形にするのが現実的です。
Q. 親族だけど相続人ではありません。何もしなくていいですか?
法律上の義務はありません。ただし、大家や保証会社から連絡が来ることはあります。その場合は「相続人ではないので対応できません」と伝えて構いません。
まとめ
- 片付ける義務があるのは相続人。大家でも保証人でもない
- 連帯保証人が負うのはお金の支払い義務だけ。荷物を運ぶ義務はない
- 相続放棄を考えているなら、部屋の物に触れない。触った時点で放棄できなくなる可能性がある
- 大家に急かされても、3ヶ月の判断期間は法律上の権利
- 特殊清掃が必要かどうかは、自分で見に行く前に管理会社か警察に状態を聞く
孤独死の現場は、精神的にも時間的にも追い込まれます。だからこそ、順番だけは守ってください。判断が先、片付けは後です。
状況が把握できて、相続することが決まったら、次は費用の話になります。特殊清掃が必要かどうかで金額が大きく変わるので、複数社に見てもらってください。
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誰が費用を負担するかを決める前に、まず金額を知ってください。話し合いは数字が出てからのほうが早く終わります。

