この記事でわかること
- 3ヶ月の期限がいつから数えられるかがわかる
- 3ヶ月で何を終わらせるべきかがわかる
- 判断が間に合わないときの対応がわかる
- 片付けをいつ始めるかがわかる
相続の手続きには期限がいくつもありますが、取り返しがつかないのは3ヶ月のものだけです。
相続放棄と限定承認。この2つは、期限を過ぎると原則としてできなくなります。
そして、この期間中に遺品を処分すると、放棄ができなくなる可能性があります。
つまり、3ヶ月は「判断する期間」であり、「片付ける期間」ではありません。

3ヶ月はいつから数えるか
「自己のために相続の開始があったことを知った時」からです。
亡くなった日からではありません。
| 状況 | 起算点 |
|---|---|
| 同居していた | 亡くなったことを知った日 |
| 疎遠で後から知らされた | 知らせを受けた日 |
| 先順位の相続人が放棄した | 自分に相続権が移ったことを知った日 |
| 相続人であることを知らなかった | それを知った日 |
参考:相続の放棄の申述|裁判所
3ヶ月でやること
1 相続人を確定させる(1〜4週目)
亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍を集めます。
- 本籍地の市区町村で取得する
- 転籍していれば、その前の本籍地にも請求する
- 遠方なら郵送請求(往復で2週間かかることがある)
いちばん時間がかかる作業です。早く始めてください。
なお、戸籍の広域交付制度により、最寄りの市区町村でまとめて請求できる場合があります。窓口で確認してください。
2 財産を把握する(1〜6週目)
| 財産 | 調べ方 |
|---|---|
| 預貯金 | 通帳、キャッシュカード、金融機関に残高証明を請求 |
| 不動産 | 名寄帳(市区町村の税務窓口)、権利証、納税通知書 |
| 有価証券 | 証券会社からの通知、証券保管振替機構への開示請求 |
| 生命保険 | 保険証券、通帳の引き落とし |
| 車、バイク | 車検証 |
| 貸金庫 | 金融機関からの通知 |
名寄帳は必ず取ってください。
その市区町村にある、亡くなった方名義の不動産が一覧で出ます。本人も把握していなかった山林や農地が見つかることがあります。
3 負債を把握する(1〜6週目)
ここが判断を左右します。
郵便物を確認する
督促状、カード会社からの通知、金融機関からの案内。葬儀のあと、しばらく郵便物を保管してください。
通帳の履歴を見る
残高ではなく履歴です。定期的な引き落とし、消費者金融からの入金。
信用情報機関に開示請求する
相続人が請求できます。
| 機関 | 主に扱う情報 |
|---|---|
| CIC | クレジットカード、信販 |
| JICC | 消費者金融、信販 |
| 全国銀行個人信用情報センター | 銀行、銀行系カード |
3つとも請求してください。1つでは漏れます。開示までに数日から2週間かかります。
保証債務を確認する
信用情報には出てこないことがあります。事業の連帯保証、知人の借金の保証、賃貸の保証人。
契約書、金銭消費貸借契約書、本人の話を覚えている人。これが相続でいちばん見落とされる部分です。
4 判断する(8〜12週目)
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 単純承認 | 財産も負債もすべて引き継ぐ。何もしなければこれになる |
| 相続放棄 | 財産も負債も引き継がない。3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述 |
| 限定承認 | 財産の範囲でのみ負債を引き継ぐ。相続人全員で申述 |
限定承認は、相続人全員でしなければなりません。1人でも反対すればできません。手続きも複雑で、実際に使われる件数は多くありません。
5 申述する(12週目まで)
相続放棄の申述
| 内容 | |
|---|---|
| 申述先 | 亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙800円+連絡用の郵便切手 |
| 必要書類 | 申述書、戸籍謄本、住民票除票など |
| 期間 | 申述から1〜2ヶ月で結果 |
自分で申述できます。家庭裁判所の窓口で書き方を教えてもらえます。
申述後、家庭裁判所から照会書が届きます。これに回答しないと受理されません。必ず返送してください。
3ヶ月では足りないとき
期間の伸長を申し立てられます。
- 申立先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 3ヶ月が過ぎる前に申し立てる
- 財産の調査に時間がかかる理由を説明する
- 3ヶ月程度の伸長が認められることが多い
間に合わないと思ったら、迷わず申し立ててください。費用は収入印紙800円と郵便切手です。

この期間にやってはいけないこと
遺品を処分すると、単純承認とみなされる可能性があります。
- 遺品を売る、譲る、捨てる
- 預貯金を引き出して使う
- 家財を自分の家に持ち帰って使う
- 不動産の名義を変える
- 車を売る、廃車にする
- 賃貸の敷金を受け取る
逆に、してよいこと
- 探す、調べる、写真を撮る
- 役所や年金の手続き
- 家の戸締まり、雨漏りの応急処置
- 傷みかけた生鮮食品の処分
- 自分のお金から公共料金を払う
線引きは相続放棄する前に遺品に触っていいかにまとめています。
賃貸に住んでいた場合
難しい状況になります。
- 片付けると、単純承認とみなされる可能性がある
- 片付けないと、家賃が発生し続ける
この場合の考え方
- 大家に事情を説明し、判断までの猶予を求める
- 家賃は自分のお金から払う
- 連帯保証人としての立場と、相続人としての立場を分けて考える
- 早めに弁護士に相談する
詳しくは賃貸で親が亡くなったときいつまでに片付けるかと孤独死した親の部屋は誰が片付けるのかにあります。
片付けを始めるのはいつか
放棄しないと決まってからです。
判断が済めば、あとは急ぐ必要がありません。持ち家なら、いつ始めても構いません。
ただし、待つ間も年20万円を超える費用がかかることがあります。判断は親が亡くなった実家はいつから片付けるかにまとめています。
3ヶ月を過ぎてしまった場合
すぐに弁護士か司法書士に相談してください。
借金の存在を知らなかったことに相当の理由があると認められれば、知った時から3ヶ月とされる場合があります。実際の判断は事案によります。
自己判断で諦めないでください。そして、時間が経つほど選択肢が減ります。
【FAQ】3ヶ月の期限についてよくある質問
Q. 財産も負債も少額です。それでも調べるべきですか。
保証債務は少額の相続でも出てきます。信用情報の開示だけは行ってください。
Q. 相続人が自分1人です。
期限も手続きも同じです。限定承認は1人でもできます。
Q. 放棄すると、次は誰が相続人になりますか。
次順位の相続人に移ります。その人にも伝えてください。知らないまま3ヶ月が過ぎることがあります。
Q. 放棄しても生命保険金は受け取れますか。
受取人が指定されていれば、その人の固有の財産として受け取れます。ただし税務上の扱いは別です。
Q. 放棄した家の管理義務はどうなりますか。
現に占有している場合、次に管理する人が決まるまで保存義務が残ることがあります。
まとめ
- 3ヶ月は「相続の開始を知った時」から。亡くなった日からではない
- 3ヶ月は判断する期間。片付ける期間ではない
- 戸籍集めと信用情報の開示から始める。時間がかかるのはここ
- 名寄帳を取れば、把握していなかった不動産が分かる
- 間に合わないと思ったら、期間の伸長を申し立てる。費用は800円と切手
まず、郵便物を保管してください。そして通帳の履歴を見てください。ここに借金の手がかりがあります。
そのうえで、信用情報を3機関に請求してください。これが済むまで、遺品には手をつけないでください。
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放棄しないと決まったら、そこから片付けです。費用の見込みだけ先に立てておくと動きやすくなります。

