この記事でわかること
- 連帯保証人が負う義務と、負わない義務の境目がわかる
- 「荷物を片付けてください」と言われたときの正しい返し方がわかる
- 2020年の民法改正で保証額に上限ができたことがわかる
- 立て替えた費用を相続人に請求できるかどうかがわかる
甥の賃貸契約の連帯保証人になっていた。その甥が亡くなり、管理会社から「部屋の荷物を撤去してください」と連絡が来た。自分は相続人ではない。それでも片付けなければいけないのか。
結論を言います。
連帯保証人に、荷物を撤去する義務はありません。
連帯保証人が負っているのはお金を支払う義務です。家賃、滞納分、原状回復費用。これらの支払いには応じる必要がありますが、現地に行って荷物を運び出す義務は契約上どこにもありません。
そしてもう一つ、知っておくべきことがあります。2020年4月以降に結ばれた契約なら、保証額に上限(極度額)が定められていなければ、その保証契約自体が無効です。契約書を確認してください。

連帯保証人が負う義務と、負わない義務
| 内容 | 連帯保証人の義務 |
|---|---|
| 滞納家賃の支払い | あり |
| 解約までの家賃の支払い | あり |
| 原状回復費用の支払い | あり |
| 特殊清掃費用の支払い | あり |
| 荷物を運び出す作業 | なし |
| 業者を手配する作業 | なし |
| 部屋の鍵を管理する | なし |
| 遺品の処分を決める | なし(むしろやってはいけない) |
支払い義務と作業義務は別物です。ここを混同したまま全部やってしまう保証人が非常に多い。
連帯保証人が勝手に荷物を撤去してはいけない理由
これは義務がないという話以上に、リスクの話です。
部屋の中の物は、亡くなった方の財産であり、相続人のものです。相続人でない連帯保証人が勝手に処分すると、後から相続人に損害賠償を請求される可能性があります。
「大家さんに頼まれたから」「早くしないと家賃がかさむから」という理由があっても、法的には正当化されません。
処分するなら、相続人の同意を書面で取ってからにしてください。メールやLINEでも構いません。「部屋の残置物を処分することに同意します」という一文があるかどうかで、立場がまったく変わります。
もし相続人と連絡が取れない、あるいは相続人全員が放棄した場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる方法があります。この場合は大家側が申し立てるのが通常です。
そもそも誰に片付ける義務があるのかは孤独死した部屋の片付けは誰がやるのかで整理しています。
「片付けてください」と言われたときの返し方
管理会社や大家から連絡が来たときの、現実的な対応です。
① 自分の立場を明確にする
私は連帯保証人であり、相続人ではありません。
保証契約に基づく金銭債務については対応いたしますが、
室内の残置物は相続財産にあたるため、
私が処分の判断をすることはできません。
相続人の方と協議をお願いいたします。
これで法的には正しい対応です。冷たいと思われるかもしれませんが、勝手に処分するほうが後々の問題になります。
② 相続人を確認する
管理会社は相続人を探しています。分かる範囲で情報を伝えるのは構いません。ただし「代わりに連絡して説得してほしい」と言われても、応じる義務はありません。
③ 費用の請求内容を確認する
支払い義務がある部分については、内訳の明細を求めてください。一式でまとめられた請求をそのまま受ける必要はありません。
④ 進めることを選ぶ場合
現実には、話を早く終わらせるために保証人が業者を手配することがあります。それ自体は問題ありません。ただし、その場合も相続人の同意を文書で取ってからにしてください。
連帯保証人の負担には上限がある。極度額を確認する
これを知らない保証人が多いのですが、金額に直結します。
2020年4月1日施行の改正民法により、個人が保証人になる根保証契約では、保証する金額の上限(極度額)を書面で定めなければ、その保証契約は効力を生じません(民法465条の2)。
賃貸借契約の連帯保証も、この個人根保証契約に当たります。
つまり、契約書に「極度額 ◯◯円」という記載がなければ、その保証契約は無効の可能性があります。
参考:極度額に関する参考資料|国土交通省
ただし、経過措置があります
改正法が適用されるのは、2020年4月1日以降に締結または合意更新された契約です。
それ以前に結ばれた契約は、施行後に初めて合意更新されるまでは、極度額の定めがなくても有効とされています。
参考:更新しない連帯保証契約と改正民法の適用の可否|公益社団法人全日本不動産協会
確認すべきこと
- 賃貸借契約と保証契約はいつ締結されたか
- その後、合意更新はされているか
- 契約書に極度額の記載はあるか
- 記載があるなら、その金額はいくらか
極度額が定められている場合、保証人の責任はその金額が上限です。それを超える請求には応じる必要がありません。
古い契約で極度額の記載がない場合は、無効を主張できるかどうかが争点になります。請求額が大きいなら、弁護士に相談する価値があります。
保証人として支払う前に、その金額が相場から外れていないかを確認しておくと、交渉の材料になります。

立て替えた費用は相続人に請求できる
連帯保証人が支払った場合、その分を相続人に請求できます(求償権)。
- 支払った領収書をすべて保管する
- いつ、何に対して、いくら払ったかを記録する
- 相続人が確定してから請求する
ただし現実には、相続人が相続放棄をしていたり、そもそも支払い能力がなかったりして、回収できないことも多くあります。支払う前に、回収できる見込みがあるかを考えてください。
相続人全員が放棄した場合、求償の相手がいなくなります。この場合、相続財産清算人が選任されれば、残された財産の範囲で配当を受けられる可能性はあります。
連帯保証人が支払いを求められたときの確認リスト
- 保証契約書に極度額の記載はあるか
- 契約はいつ締結・更新されたか
- 請求の内訳は明細が出ているか
- 通常損耗や経年劣化が含まれていないか
- 大家が孤独死保険に加入していないか
- 家賃保証会社は入っていないか
- 故人の火災保険(借家人賠償)は使えないか
5番から7番は、聞かなければ教えてもらえません。保険が使えれば請求額が下がります。必ず確認してください。
請求額そのものが妥当かどうかを見る方法は賃貸の遺品整理費用を大家から請求されたにあります。
【FAQ】連帯保証人の義務についてよくある質問
Q. 保証人を辞めることはできますか?
契約期間中に一方的に辞めることは原則できません。ただし、借主が亡くなった時点で、それ以降に新たに発生する債務については、保証の範囲外と主張できる場合があります。個別の判断になるので、弁護士に確認してください。
Q. 保証人が複数いる場合、どう分担しますか?
連帯保証の場合、大家は誰か一人に全額を請求できます。支払った人は、他の保証人に対して負担部分を請求できます。
Q. 相続人が「保証人がやるべきだ」と言ってきます。
法的には逆です。片付ける義務は相続人にあります。この記事の内容を示して、話し合ってください。
Q. 荷物を処分しないと家賃が発生し続けます。どうすればいいですか?
家賃を止めるのは「片付け」ではなく「解約」です。解約の権利は相続人にあります。相続人に解約手続きを促してください。相続人が動かない場合は、大家側から契約解除の手続きを進めてもらうことになります。
Q. すでに片付けてしまいました。
相続人と連絡を取り、事後になりますが同意を取ってください。処分した物の写真やリストが残っていれば、それも共有します。トラブルになりそうなら早めに弁護士に相談してください。
まとめ
- 連帯保証人が負うのはお金の支払い義務だけ。荷物を運ぶ義務はない
- 勝手に処分すると損害賠償のリスクがある。相続人の同意を書面で取る
- 2020年4月以降の契約は極度額の定めがなければ保証契約が無効の可能性がある
- 請求されたら内訳の明細を求め、保険が使えないかを確認する
- 支払った分は相続人に請求できるが、回収できるとは限らない
保証人になっただけで、家財の処分まで背負う必要はありません。まず契約書を出して、極度額の記載を確認するところから始めてください。
そのうえで、支払いに応じる部分については、金額が妥当かどうかを別の業者の見積もりと比べて判断してください。
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相続人の同意が取れて片付けに進むなら、費用の比較から始めてください。

