この記事でわかること
- 海外在住のまま、実家の片付けと手続きをどこまで進められるかがわかる
- 帰国が必要になるのは何のためか、逆に不要なものは何かがわかる
- 在留証明と署名証明という、海外在住者に必須の書類がわかる
- 時差と郵送の遅れを織り込んだ進め方がわかる
海外に住んでいて、日本の親が亡くなった。葬儀には帰ったが、実家の片付けまでは滞在を延ばせない。会社も家族もこちらにある。
先に結論を言います。実家の片付けは、日本に戻らなくても終えられます。立会いなしで対応する遺品整理業者は珍しくなく、鍵さえ渡せば片付けから搬出、写真での報告まで済ませてもらえます。
一方で、相続の手続きには帰国せずに済ませるための書類が必要になります。日本国内なら印鑑証明書1枚で済むところが、海外在住者は在外公館で「在留証明」と「署名証明」を取ることになります。ここを知らずに進めると、書類の不備で何往復もします。
つまり、片付けは任せられる、書類は先回りして準備する。この2つを並行させるのが最短です。
海外からでも、メールで概算を取るところまでは進められます。時差を気にせず問い合わせられます。

帰国が必要なもの、不要なもの
| やること | 帰国の要否 |
|---|---|
| 死亡届の提出 | 不要(日本の親族が可能) |
| 実家の遺品整理・片付け | 不要(立会いなしで依頼できる) |
| 賃貸の解約 | 不要(書面・メールで可能) |
| 銀行口座の相続手続き | 不要(郵送で対応する銀行が多い) |
| 遺産分割協議書への署名 | 不要(署名証明を添付する) |
| 相続登記 | 不要(司法書士に委任できる) |
| 不動産の売却 | 原則不要(委任状で代理人が可能) |
| 相続放棄の申述 | 不要(郵送で申立てできる) |
ほぼすべて、帰国せずに進められます。帰国が実質的に必要になるのは、思い出の品を自分の目で選びたい場合くらいです。
海外在住者に必要な2つの書類
日本に住民票がないため、印鑑証明書が取れません。その代わりになるのが次の2つです。
在留証明
いまその国のどこに住んでいるかを証明する書類です。日本の住民票に相当します。相続登記や不動産の売却で求められます。
署名証明(サイン証明)
書類に署名したのが本人であることを証明するものです。日本の印鑑証明書に相当します。遺産分割協議書に添える形で使います。
どちらも、住んでいる国の日本大使館または総領事館で取得します。
参考:在留証明・署名証明|外務省
注意点が2つあります。
1つ目。署名証明には、書類と綴じ合わせる形式(形式1)と、単独で発行される形式(形式2)があります。遺産分割協議書に使うなら、協議書の現物を持参して綴じ合わせる形式1が求められることがほとんどです。つまり、日本から協議書を郵送してもらってから在外公館へ行く必要があります。
2つ目。在外公館は予約制のところが多く、遠方に住んでいると移動だけで1日かかります。早めに動いてください。
時間がかかるのは書類、片付けではない
ここが海外在住者の落とし穴です。
片付けは業者に頼めば数時間から1日で終わります。ところが書類は、日本から国際郵便で送ってもらい、在外公館で証明を取り、また日本へ送り返すという往復が発生します。1往復で2〜4週間かかることもあります。
だから、片付けを待たずに書類の準備を先に始めてください。
具体的には、こうなります。
| 時期 | 日本側でやること | 海外側でやること |
|---|---|---|
| 1〜2週間目 | 死亡届、賃貸なら管理会社へ連絡 | 在外公館の場所と予約方法を調べる |
| 2〜4週間目 | 相続人の確定、遺産の把握 | 在留証明を取得しておく |
| 1〜2ヶ月目 | 遺産分割協議書の作成、国際郵便で送付 | 署名証明を取得(協議書と綴じる) |
| 並行して | 遺品整理業者へ依頼、片付け実行 | 写真で報告を受けて確認 |
片付けは、いつやっても構いません。書類の流れを止めないことが優先です。
ただし賃貸の場合は例外です。解約するまで家賃が発生し続けるので、片付けも急ぐ必要があります。詳しくは賃貸で親が死亡したら退去はいつまでかに書いています。

片付けを海外から進める手順
① 現地の状況を誰かに確認してもらう
日本にいる親族、あるいは実家の近所の方に、室内の写真を撮ってもらえると見積もりの精度が上がります。難しければ、業者に現地調査へ行ってもらう方法もあります。
② 時差を考えてメールで問い合わせる
電話は時差の関係で難しいので、メールで進めるほうが確実です。伝える内容はこれで足ります。
- 海外在住で立会いができないこと
- 間取り、階数、エレベーターの有無
- 残っている家具家電
- 希望する時期
最初に「海外在住で立会いができない」と書いてください。対応していない業者はここで振り分けられます。
③ 鍵を渡す
海外からの郵送は時間がかかるうえ、紛失のリスクもあります。次のどれかが現実的です。
- 日本にいる親族に預けて、業者に渡してもらう
- 実家の管理を頼んでいる不動産会社を経由する
- 玄関に暗証番号式のキーボックスを設置してもらい、番号だけ伝える
3つ目は不動産業界で一般的な方法で、数千円で設置できます。業者に相談すれば対応してくれることがあります。
④ 残すものをリストで渡す
「仏壇」「アルバム」「引き出しの中の通帳と権利証」のように具体的に書いてください。「大事なもの」では伝わりません。
⑤ 写真で報告を受ける
作業前・作業後の写真を送ってもらいます。依頼前に「写真報告はしてもらえますか」と必ず確認してください。
鍵の渡し方や貴重品の扱いについては、遠方の実家、遺品整理に行けないときの進め方で詳しく分けています。海外在住でも考え方は同じです。
支払いをどうするか
海外からの送金は手数料が高く、時間もかかります。次のどれかで済ませるのが現実的です。
- 日本の銀行口座を残しているなら、そこから振り込む
- 日本にいる親族に立て替えてもらい、後で精算する
- クレジットカード払いに対応している業者を選ぶ
3つ目は対応している業者が限られるので、見積もりの段階で聞いておいてください。
【FAQ】海外在住で親が亡くなったときのよくある質問
Q. 相続放棄も海外からできますか。
できます。家庭裁判所への申述は郵送で行えます。ただし期限は「自分が相続人だと知ったときから3ヶ月」です。海外にいると通知が遅れることがあるので、必要なら期間の伸長を申し立ててください。
参考:相続の承認又は放棄の期間の伸長|裁判所
Q. 日本の戸籍謄本はどうやって取りますか。
本籍地の市区町村役場に郵送で請求できます。定額小為替の入手が海外では難しいため、日本にいる親族に代理で取得してもらうほうが早いことが多いです。
Q. 実家を売却したい場合も帰国は不要ですか。
原則として不要です。委任状と在留証明、署名証明を添えて、日本にいる代理人や司法書士に手続きを任せられます。ただし書類のやり取りが増えるため、期間には余裕を見てください。
Q. 現地の言語で発行された書類は使えますか。
日本の役所や法務局に提出する書類は、日本語訳を付ける必要があります。翻訳者を明記した訳文を添付します。
Q. 兄弟が日本にいて、任せたいのですが。
任せる場合でも、遺産分割の内容と費用の負担は先に文書で合意してください。海外にいると細かい確認が取りづらく、あとから食い違いが出やすくなります。
まとめ
- 実家の片付けも相続手続きも、海外在住のまま進められる
- 帰国が必要になるのは、自分の目で遺品を選びたい場合くらい
- 印鑑証明の代わりに、在外公館で在留証明と署名証明を取る
- 時間がかかるのは片付けではなく書類の往復。書類の準備を先に始める
- 片付けは立会いなしで依頼できる。鍵の渡し方は代理人経由かキーボックス
海外にいるからと帰国の予定を組む前に、まず片付けの見積もりをメールで取ってみてください。金額と日数が分かれば、帰国が必要かどうかの判断がつきます。
多くの場合、往復の航空券代のほうが片付けの費用より高くつきます。
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帰国の予定を組む前に、片付けを任せた場合の金額を確認してください。航空券より安く済むことがあります。

