この記事でわかること
- 勧告を受けた時点で何が確定したのかがわかる
- 従わないまま放置すると、どこまで進むのかがわかる
- 勧告を取り消してもらう方法がわかる
- 直すか手放すかを、金額で判断できる
市区町村から「特定空家等に該当するため勧告する」という書面が届いた。何をどうすればいいのか、放っておくとどうなるのか。
先に、いま起きたことを整理します。
勧告を受けた時点で、その土地の固定資産税は上がることが確定しています。 住宅が建っている土地の税額を安くする住宅用地の特例が、勧告によって外れるためです。
そして勧告は最終段階ではありません。この先に「命令」と「代執行」が控えています。代執行まで進むと、行政が費用をかけて建物を壊し、その全額が所有者に請求されます。
ただし、期限内に改善すれば勧告は取り消されます。まだ止められる段階です。
勧告を受けるほど傷んだ家を直して持ち続けるか、手放すか。判断には両方の金額が必要です。

勧告は3段階目
空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづく手続きは、順番が決まっています。
| 段階 | 内容 | 起きること |
|---|---|---|
| 助言・指導 | 状態を改善するよう求められる | 税金は上がらない |
| 勧告 | 期限を切って改善を求められる | 住宅用地の特例が外れる |
| 命令 | 勧告に従わない場合 | 従わないと50万円以下の過料 |
| 代執行 | 命令にも従わない場合 | 行政が撤去し、費用を全額請求 |
参考:空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov法令検索
勧告の書面には、何を、いつまでに直すかが書かれています。まずそこを確認してください。
いつから税金が上がるのか
固定資産税は、その年の1月1日時点の状況で決まります。
つまり、年の途中で勧告を受けた場合、上がるのは翌年の課税分からです。納税通知書が届くのは、さらにその年の春です。
逆に言えば、年内に改善して勧告を取り消してもらえれば、上がらずに済みます。
どのくらい上がるかは、住宅用地の特例が外れた分です。200平方メートルまでの部分は課税標準が6分の1だったものが元に戻ります。名目上は6倍ですが、負担調整措置があるため実際の税額はきれいに6倍にはなりません。
正確な金額は、市区町村の税務課に「勧告により特例が外れた場合、この土地の税額はいくらになるか」と聞けば教えてもらえます。
仕組みの詳しい説明は誰も住んでない実家の税金が上がったのはなぜかにまとめています。
勧告を取り消してもらう
書面に書かれた期限内に改善して、市区町村へ連絡します。担当課が確認して、改善が認められれば勧告は撤回されます。
指摘されやすいのは次のような状態です。
- 屋根材や外壁材が剥がれ、飛散するおそれがある
- 建物が傾いている、基礎が崩れている
- 雑草や樹木が敷地を越えて隣地や道路に出ている
- 窓や扉が壊れていて、誰でも入れる状態になっている
- ごみが放置され、悪臭や害虫が発生している
全部を直す必要があるとは限りません。書面に書かれた項目に対応すれば足ります。何をすれば改善と認められるかは、担当課に直接聞くのが確実です。曖昧なまま工事をして、認められなかったという事態を避けられます。
従わないとどうなるか
命令
勧告の期限を過ぎても改善されない場合、命令が出されます。命令に従わないと50万円以下の過料が科されます。また、命令が出された旨が標識で掲示されることがあります。
代執行
命令にも従わない場合、行政が代わりに撤去などを行います。かかった費用は全額が所有者に請求され、支払わなければ財産の差押えに進みます。
代執行の解体費用は、業者に自分で頼むより高くなるのが通常です。行政が入札などの手続きを踏むためで、同じ建物でも数十万円から数百万円の差がつくことがあります。
つまり、放置して得をする場面はありません。どこかの段階で費用は発生し、遅くなるほど金額は増えます。
修繕費を出す前に、いまの状態でいくらになるかを確かめてください。直さずに手放す道もあります。

直すか、手放すか
判断は金額でしてください。3つの選択肢を並べます。
| 選択 | 費用 | その後 |
|---|---|---|
| 指摘箇所を直して持ち続ける | 修繕費+毎年の管理費と税金 | 状態が悪化すればまた指摘される |
| 解体して更地にする | 解体費(補助金の対象になることがある) | 建物の税金は消えるが、土地の特例も外れる |
| 売却する | 0円(仲介手数料は売却代金から) | 以降の負担がすべて消える |
勧告を受けるほど傷んだ家を、直して持ち続ける意味があるかどうかが分岐点です。将来住む予定も貸す予定もないなら、修繕費は回収できません。
解体には自治体の補助金が使えることがあります。ただし多くの制度で「契約前・着工前の申請」が条件なので、業者と契約したあとでは対象外になります。詳しくは空き家の解体費用の補助金はいくらかにまとめています。
売却については、傷んだ家でも買い取る業者があります。勧告を受けている物件でも扱われます。
兄弟の共有名義の場合
通知は代表者として登録されている人にだけ届きます。ほかの共有者が事態を知らないまま期限が過ぎることがあります。
まず通知の内容を共有してください。そのうえで、費用の負担と、直すか手放すかの方針を決めます。
共有者の全員が同意しないと売却できません。話がまとまらない場合の進め方は兄弟の共有名義で実家を売りたいが反対されているで扱っています。
【FAQ】特定空家の勧告についてよくある質問
Q. 勧告に不服がある場合はどうすればいいですか。
行政不服審査法にもとづく審査請求ができます。ただし期限があるため、書面に記載された教示の内容を確認してください。
Q. 期限までに直せそうにありません。
担当課に連絡して、事情と見込みを伝えてください。合理的な理由があれば、期限の扱いについて相談に応じてもらえることがあります。連絡しないまま期限を過ぎるのが最も不利です。
Q. 売却する予定です。それでも直す必要がありますか。
売却が決まっていることを担当課に伝えてください。所有権が移れば義務も移ります。ただし売却までの間に命令へ進む可能性があるので、時期を共有しておくことが重要です。
Q. 相続登記をしていません。誰に責任がありますか。
登記が親の名義のままでも、相続人が所有者として扱われます。なお相続登記は義務化されています。
Q. 管理不全空家との違いは何ですか。
特定空家等はすでに深刻な状態、管理不全空家等はそのおそれがある状態です。どちらも勧告を受ければ住宅用地の特例が外れます。
まとめ
- 勧告を受けた時点で、翌年から固定資産税が上がることが確定している
- 勧告の前に助言・指導があり、その先に命令と代執行が控えている
- 期限内に改善すれば勧告は取り消され、税金は上がらない
- 代執行まで進むと、行政が壊した費用の全額が請求される
- 直すか手放すかは、修繕費と今後の負担を並べて金額で決める
まず書面を読み直して、何をいつまでに直すよう書かれているかを確認してください。そのうえで担当課に電話して、どこまで対応すれば改善と認められるかを聞く。ここまでは今日できます。
そのあとで、直す費用と、手放した場合の金額を比べて決めてください。
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