この記事でわかること
- 実家を持ち続けている間にかかり続ける費用がわかる
- 先延ばしにした年数ごとの損失を、自分の数字で計算できる
- 期限を過ぎると使えなくなる税の特例がわかる
- 建物の価値がどのくらいの速さで下がるかがわかる
そのうち売ろうと思っているが、決心がつかない。兄弟との話もまとまらない。とりあえず今年も見送ることにした。
その判断で、いくら失っているのかを計算したことはあるでしょうか。
先に言います。先延ばしのコストは、年間の維持費だけではありません。 建物の価値が下がる分と、期限を過ぎて使えなくなる税の特例が加わります。
そして、いちばん大きいのは3つ目です。相続から3年を過ぎると、最大3000万円の控除が使えなくなります。 該当する家であれば、これだけで数百万円の差になります。
先延ばしの損失を計算するには、いまの査定額が要ります。無料で分かるので、決心がつく前に数字だけ押さえてください。

毎年かかり続けるもの
まず、持っているだけで出ていく費用です。
| 費目 | 目安(年間) |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 数万円〜十数万円 |
| 火災保険 | 誰も住んでいない場合は割高、または加入不可 |
| 電気・水道の基本料金 | 管理のため残すと年1〜2万円 |
| 草刈り・剪定 | 自分で通うなら交通費、委託なら年3〜10万円 |
| 空き家管理サービス | 月5,000〜10,000円なら年6〜12万円 |
| 修繕(雨漏り、シロアリなど) | 発生すれば数十万円 |
遠方の場合は交通費が加わります。年に4回通って往復2万円なら、それだけで8万円です。
ここまでで、年間10万〜30万円になる家が珍しくありません。
建物の価値が下がる
木造住宅の価値は、時間とともに確実に下がります。
さらに、人が住まなくなった家は傷むのが早いという問題があります。換気されないため湿気がこもり、カビが発生し、木部が傷みます。給排水管の封水が切れて臭気が上がり、シロアリや小動物が入り込むこともあります。
その結果、こうなります。
- 年数が経つほど、建物として評価される部分が減る
- 傷みが進むと、買主が現れにくくなる
- 最終的に「解体前提の土地」としてしか売れなくなる
解体前提になると、買主は解体費を差し引いた金額しか出しません。木造30坪で100万〜200万円程度が差し引かれることになります。
つまり、先延ばしは維持費を払いながら、売却額を下げていく行為です。
期限を過ぎると使えなくなる特例
ここがいちばん大きい部分です。相続した家を売るときに使える税の特例には、期限があります。
被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除
いわゆる空き家の3000万円特別控除です。一定の要件を満たす場合、売却益から最大3000万円を差し引けます。
期限は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。
要件は多く、主なものだけでも次のとおりです。
- 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物ではないこと
- 相続の直前に被相続人が一人で住んでいたこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 耐震改修をするか、建物を取り壊して売ること(2024年1月以降は買主が譲渡後に行う場合も対象)
なお、相続人が3人以上の場合、控除額は2000万円になります。
参考:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
取得費加算の特例
相続税を納めた場合、支払った相続税の一部を取得費に加算して、売却益を圧縮できる制度です。
期限は、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで。実質的に相続開始から3年10ヶ月です。
参考:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
どちらも要件が細かく、適用できるかは個別の判断になります。該当しそうなら、期限が来る前に税理士に確認してください。期限を過ぎてからでは取り返せません。
自分のケースで計算する
手元の数字を当てはめてください。
先延ばしの損失
=(年間の維持費 + 交通費)× 先延ばしする年数
+ 建物の劣化による売却額の下落
+ 期限切れで使えなくなる特例の分
年間の維持費が20万円で、3年先延ばしにすれば60万円です。そこに劣化による下落が乗ります。
そして3000万円控除の対象になる家なら、3年を過ぎた瞬間に、譲渡所得税の負担が数百万円変わることがあります。
3年の期限が来る前に、いくらで売れるのかを知っておいてください。判断はそのあとで構いません。

それでも決められない理由
金額を出しても動けないことがあります。理由はたいてい3つです。
兄弟の意見がまとまらない
共有名義なら、全員の同意がないと売却できません。放置している間も費用は発生し続けます。話がまとまらない場合の進め方は兄弟の共有名義で実家を売りたいが反対されているにあります。
気持ちの整理がついていない
親が暮らした家を手放す決心は、金額の問題ではありません。ただ、期限のある特例だけは待ってくれません。売却の判断とは別に、期限がいつかだけは把握しておいてください。
いくらで売れるか分からない
これは調べれば解決します。査定は無料で、依頼したからといって売る義務は生じません。金額を知らないまま先延ばしにするのが、いちばん高くつきます。
いま確認しておくべきこと
売る決心がついていなくても、次の3つは今日確認できます。
- 相続開始日はいつか。 3年の期限がいつ来るかが決まります
- 建物の建築年月日はいつか。 1981年5月31日以前かどうかで3000万円控除の可否が変わります
- いま売るとしたらいくらか。査定を取れば分かります
この3つが分かれば、先延ばしにした場合に何をいくら失うかが数字で出ます。判断はそのあとで構いません。
【FAQ】売却の先延ばしについてよくある質問
Q. 3年の期限を過ぎたら、もう売れませんか。
売れます。売れなくなるのではなく、税の特例が使えなくなるだけです。ただし手取り額は変わります。
Q. 更地にしてから売ったほうがいいですか。
一概には言えません。解体費を先に払っても売却額が上がらないことがあります。解体前に査定を取って比べてください。
Q. 賃貸に出すという選択はどうですか。
傷みが進んだ家では、貸せる状態にするための改修費が回収できないことが多くあります。まず改修の見積もりと、想定される賃料を並べて判断してください。
Q. 兄弟が反対していて動けません。
年間の維持費と、期限で失う特例の金額を数字で示してください。感情ではなく金額で話すと結論が出やすくなります。
Q. 査定を取ったら売らなければいけませんか。
なりません。金額を知るためだけに取って構いません。
まとめ
- 先延ばしのコストは、維持費・建物の劣化・期限切れの特例の3つ
- 年間の維持費は10万〜30万円になる家が珍しくない
- 人が住まない家は傷むのが早く、解体前提になると売却額が大きく下がる
- 3000万円の特別控除は相続開始から3年。取得費加算は3年10ヶ月
- 決心がつかなくても、相続開始日と建築年月日と査定額だけは把握しておく
まず相続開始日を確認して、3年の期限がいつ来るかを手帳に書いてください。それだけで、先延ばしできる残り時間が見えます。
そのうえで、いま売るといくらかを調べる。査定は無料で、売る義務も生じません。数字がそろってから判断すれば十分です。
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売ると決めていなくても構いません。金額を知らないまま先延ばしにするのが、いちばん高くつきます。

