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引き出しから日記が出てきた。手紙の束もある。読んでいいものか、迷って手が止まっている。
この迷いは、片付けの現場で実際に起きています。そして、これは片付けの手が止まる典型的な場面です。
先に、法律上の扱いを整理します。ここだけは、迷いではなく線が引けます。
読むこと自体を禁じる法律はない
亡くなった方の日記や手紙を、相続人が読むこと自体を禁じる法律はありません。
関係するのは刑法133条の信書開封罪です。条文はこうなっています。
正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の拘禁刑または二十万円以下の罰金に処する。
読むときに効いてくるのは、次の3点です。
| 条文の要素 | 意味すること |
|---|---|
| 封をしてある信書 | 対象は封が閉じたままのものだけ。すでに開封されている手紙や日記は当たらない |
| 正当な理由がないのに | 理由があれば成立しない。相続財産の調査は理由になりうる |
| 告訴がなければ公訴を提起できない | 刑法135条の親告罪。告訴する人がいなければ刑事手続きは始まらない |
出典:刑法133条、135条
つまり、机の上に出ていた日記や、すでに開いている手紙を読む行為は、この条文の射程に入りません。法律の問題というより、自分がどうしたいかの問題になります。
相談者封が閉じたままの手紙が何通も出てきました。開けたら罪になりますか?



開けるだけで即座に罪になるわけではありません。条文には「正当な理由がないのに」と書かれています



相続の調査は理由になりますか?



借金や保険を探すのは正当な理由にあたると考えられます。ただ、遺言書らしきものだけは別です。それは開けないでください
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封のあるものが遺言書だった場合だけ、扱いが違う
ここだけは開けないでください。民法1004条3項で、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人の立会いがなければ開封できないと定められています。家庭裁判所以外で開けると5万円以下の過料の対象です。
見分け方は封筒です。「遺言書」「遺言状」と書かれているもの、封じ目に印鑑が押されているものは、開けずにそのまま家庭裁判所へ持って行ってください。
親の日記や手紙を読む前に決めておくこと
読んでしまってから戻すことはできません。開ける前に、次の3つを考えてください。
1 何のために読むのか?
- 相続に必要な情報を探している
- 親のことを知りたい
- 処分してよいか判断したい
目的が「必要な情報を探す」なら、全部を読む必要はありません。通帳の場所、保険、借金、遺言の有無。これらは表紙や書き出しを見れば見当がつきます。
2 知りたくないことが書かれていたらどうするか
日記には、家族について書かれていることがあります。自分についての記述もあります。好意的な内容とは限りません。
読んでから後悔した、という声は実際にあります。ここを想像したうえで開けてください。
3 兄弟に共有するかどうか
自分だけが読んで、内容を伝えないという選択もあります。逆に、全員で読むという決め方もあります。
先に決めておかないと、あとから「なぜ黙っていたのか」となることがあります。
相続に関わる情報を探す場合
日記や手紙の中に、手続きに必要な情報が残っていることがあります。
| 探しているもの | 見つかることがある場所 |
|---|---|
| 遺言書の存在 | 日記の記述、封書、貸金庫の記録 |
| 借金の有無 | 督促の手紙、返済の記録 |
| 保険の契約 | 保険会社からの封書 |
| 家を買ったときの金額 | 契約書、領収書、当時の手紙 |
| 疎遠な相続人の存在 | 手紙の差出人 |
この中で見落とすと損をするのが4つ目です。家を売る予定があるなら、購入時の契約書や領収書は捨てないでください。納める税額が変わります。詳しくは親の家の取得費が分からない、契約書がないにあります。
親の日記や手紙を読まずに処分する
読まないという選択も、同じだけ正当です。
方法
- 中を見ずに、そのまま供養に出す
- 遺品整理業者に、開けずに供養へ回すよう依頼する
- 自治体のルールに従って処分する
供養に出す場合の費用は、数千円から3万円程度が目安です。段ボール1箱単位で受け付ける寺社があります。
「読まなかったこと」を後悔する方もいます。ただ、読んで後悔することも同じくらいあります。どちらが正しいというものではありません。
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兄弟がいる場合
処分する前に、存在を伝えてください。
「日記と手紙が出てきた。読むか、読まずに供養に出すか、どうしたいか」
この一言があるかどうかで、あとの関係が変わります。黙って処分したことが、あとで問題になるのがいちばん多い形です。
決め方の例です。
- 全員が読まないと決めて、開けずに供養する
- 希望する人だけが読む
- 相続に関わる部分だけを確認し、それ以外は読まない
- 全員が集まったときに一緒に開ける
期限を切ってください。「◯月◯日までに希望がなければ、開けずに供養に出します」と伝えれば、判断が止まりません。
処分の合意の作り方は兄弟の遺品を勝手に処分するとトラブルになるかにまとめています。
手紙の差出人について
古い手紙から、知らない親族の存在が分かることがあります。
相続人が増える可能性があるなら、確認が必要です。ただし、手紙だけでは判断できません。相続人の範囲は戸籍で確定させます。
差出人に連絡するかどうかは、また別の判断です。訃報を知らせるべき相手が含まれていることもあります。
手が止まったときの進め方
日記や手紙は、写真と同じく仕分けが進みません。1通ごとに判断が要るためです。
進め方は写真と同じです。
- 日記と手紙は保留の箱にまとめる
- 家具、衣類、生活用品を先に片付ける
- 箱に収まる量まで減ったら持ち帰る
- 後日、落ち着いた場所で決める
今日決めなくて構いません。紙は場所を取らず、傷みもゆっくりです。急いで決める理由がありません。
手が止まる仕組みは遺品整理で気持ちが追いつかないにまとめています。
親の日記と手紙の扱いでよくある質問
- 封のしてある手紙を開けたら罪になりますか?
刑法133条は「正当な理由がないのに」封をしてある信書を開けた場合の規定です。相続財産の調査という理由があれば当たりません。刑法135条の親告罪でもあります。ただし遺言書らしきものは別で、開けないでください。
- すでに開封されている手紙や日記を読むのは問題ありませんか?
刑法133条の対象は封をしてあるものだけなので、この条文には当たりません。読むかどうかは自分で決められます。
- 遺言書らしきものが出てきました。どうすればいいですか?
開封せず、家庭裁判所に検認を申し立ててください。家庭裁判所以外で開封すると5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。
- 法務局に預けられていた遺言書も検認が必要ですか?
不要です。公正証書で作られた遺言も検認は要りません(民法1004条2項)。
- 読んだことを兄弟に言うべきですか?
言っておいたほうが、あとの関係が保てます。内容まで共有するかどうかは別に決められます。
- 古い契約書や領収書は捨ててもいいですか?
家を売る予定があるなら残してください。取得費が分からないと、売却代金の5%で計算することになり、納める税額が大きく変わります。
この記事の要点
- 相続人が日記や手紙を読むこと自体を禁じる法律はない
- 刑法133条の対象は封をしてあるものだけ。開封済みの手紙や日記は当たらない
- 遺言書だけは別で、家庭裁判所の外で開封すると5万円以下の過料(民法1004条、1005条)
- 読むかどうかより、読んだあと兄弟にどう伝えるかを先に決めておく
- 家を売る予定があるなら、当時の契約書や領収書だけは処分前に探す
まず、日記と手紙は保留の箱にまとめてください。他のものを先に片付けたほうが確実に進みます。
そして、兄弟がいるなら存在だけは伝えてください。読むかどうかは、そのあとで決められます。
親の日記と手紙の扱いについて次に読む記事
続けて読むなら、このあたりです。
開けずに供養へ回すよう指示できます。作業とあわせて頼めば、自分で判断せずに済みます。
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