この記事でわかること
- 取得費が分からないと税金がどれだけ増えるかがわかる
- 契約書の代わりになる資料がわかる
- 探す場所が具体的にわかる
- 見つからなかった場合の進め方がわかる
家を売ることになったが、親がいつ買ったのか、いくらだったのかが分からない。契約書も見当たらない。
これは古い家では珍しくありません。そして、放っておくと税額が大きく変わります。
先に仕組みを書きます。
売却で利益が出たかどうかは「売った金額」から「買った金額(取得費)」を引いて計算します。取得費を証明できないと、売却額の5%しか引けません。
つまり、売却額のほぼ全額が利益とみなされて課税されます。

どれだけ変わるか
売却額1,000万円の家で比べます。
| 取得費が分かる場合 | 分からない場合 | |
|---|---|---|
| 売却額 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 取得費 | 800万円(契約書あり) | 50万円(売却額の5%) |
| 譲渡費用 | 50万円 | 50万円 |
| 譲渡所得 | 150万円 | 900万円 |
| 税額(長期20.315%) | 約30万円 | 約182万円 |
差は150万円を超えます。契約書1枚の有無で、これだけ変わります。
参考:取得費が分からないとき|国税庁
契約書の代わりになる資料
契約書そのものがなくても、金額を示す資料があれば認められる可能性があります。
| 資料 | 何が分かるか |
|---|---|
| 売買契約書の写し | 購入価格そのもの |
| 領収書 | 支払った金額 |
| 通帳の入出金記録 | 購入時期の支払い |
| 住宅ローンの金銭消費貸借契約書 | 借入額 |
| ローンの返済予定表・償還表 | 借入額と時期 |
| 住宅ローン控除の申告書控え | 取得価額 |
| 登記簿の抵当権の債権額 | 借入額の推定 |
| 建築請負契約書 | 建物の建築費 |
| 分譲時のパンフレット・価格表 | 販売価格 |
| 火災保険の契約書 | 建物の評価額 |
通帳と登記簿は、探せば残っていることが多い資料です。
抵当権が設定されていれば、登記簿にその債権額が記載されています。全額を借りて買ったのであれば、購入価格の手がかりになります。登記事項証明書は法務局で誰でも取得できます。
なお、これらの資料で認められるかどうかは個別の判断になります。税務署か税理士に確認してください。
探す場所
高齢者は書類を分散して保管しています。次の場所を順に見てください。
- 仏壇の引き出し、その下の収納
- 押し入れの天袋
- タンスの最下段
- 金庫、鍵付きの引き出し
- 銀行の貸金庫
- 権利証(登記済証)が入っている袋のなか
- 古い封筒、菓子箱、紙袋
- 本棚の本の間
権利証の袋がいちばん確率が高い場所です。購入時の書類はまとめて渡されるため、契約書が一緒に入っていることがあります。
そして、片付けを始める前に探してください。業者に処分を頼んだあとでは戻りません。仕分けの考え方は遺品の捨てて後悔したものにまとめています。
家族と関係先に聞く
兄弟や親族
購入した時期の事情を覚えていることがあります。「建て替えたのは弟が生まれた年」といった記憶から時期を絞れます。
取引していた金融機関
住宅ローンの記録が残っていることがあります。保存期間には限りがありますが、聞く価値はあります。
購入した不動産会社や工務店
分譲地なら、当時の価格表が残っていることがあります。廃業していても、地域の同業者が資料を持っている場合があります。
建物と土地は分けて考える
取得費は土地と建物で扱いが違います。
- 土地は減らない
- 建物は使った年数に応じて価値が減る(減価償却)
築100年の木造家屋のように古い建物は、建物の取得費がほぼ残らないことがあります。その場合、実質的には土地の取得費が争点になります。
計算は複雑なので、金額が大きい場合は税理士に確認してください。
取得費の扱いは会社によって案内が違います。査定のときに、税額の見込みも聞いてください。

見つからなかった場合
5%の概算取得費を使うことになります。ただし、諦める前に次を確認してください。
3000万円特別控除が使えないか
相続した空き家を売る場合、要件を満たせば最大3000万円が控除されます。これが使えれば、取得費が分からなくても税額がゼロになることがあります。
要件と期限は空き家の売却で手取りはいくらかと相続した家はいつまでに売れば税金が安いかにあります。
譲渡費用を漏らさず計上する
仲介手数料、印紙税、測量費、解体費、立退料など、売るために直接かかった費用は差し引けます。領収書を保管してください。
取得費に加算できるものを確認する
購入時の仲介手数料、登記費用、不動産取得税、購入後の増改築費用なども取得費に含められます。当時の領収書があれば探してください。
相続税を払っている場合
相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却すると、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。
進める順番
- 権利証の袋を開けて、中身を全部確認する
- 通帳、ローンの償還表、火災保険の書類を探す
- 法務局で登記事項証明書を取り、抵当権の債権額を見る
- 兄弟や親族に購入時期を聞く
- それでも分からなければ、税務署か税理士に相談する
- 並行して、3000万円特別控除が使えるかを確認する
1から3は今週中にできます。そして、これは片付けを始める前にやることです。
【FAQ】取得費が分からないときのよくある質問
Q. 5%ではなく、市街地価格指数などで計算できませんか。
そうした方法が争われた事例はありますが、認められるとは限りません。税務署か税理士に確認してください。
Q. 相続で取得した場合、取得費はどうなりますか。
亡くなった方が取得したときの金額と時期を引き継ぎます。相続したときの評価額ではありません。
Q. 契約書のコピーでも使えますか。
原本がなくてもコピーがあれば手がかりになります。税務署に確認してください。
Q. 建て替えている場合はどうなりますか。
土地は最初に取得したとき、建物は建て替えたときが基準です。建築請負契約書を探してください。
Q. 兄弟で分ける場合はどう計算しますか。
持分に応じて、それぞれが取得費と譲渡所得を計算します。
まとめ
- 取得費を証明できないと、売却額の5%しか引けない
- 売却額1,000万円なら、税額の差は150万円を超えることがある
- 契約書がなくても、通帳、ローンの償還表、登記簿の抵当権額が手がかりになる
- 権利証の袋の中を、片付ける前に必ず確認する
- 3000万円特別控除が使えれば、取得費が分からなくても税額がゼロになることがある
まず、権利証がどこにあるかを確認してください。その袋の中に契約書が入っていることがあります。
そして、片付けを業者に頼む前にやってください。処分してしまってからでは取り返せません。
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