この記事でわかること
- 60代以降で実家の片付けをするときに、実際に何がきついのかがわかる
- 怪我や体調を崩しやすい作業が具体的にわかる
- どこまで自分たちでやって、どこから任せるかの線引きができる
- 費用を親の財産から出せることがわかる
兄弟で実家を片付けることになったが、自分も兄も60を過ぎている。若い頃と同じつもりで動いたら、一日で腰に来た。
親の家の片付けは、多くの場合50代から70代の子どもが担うことになります。この年代にとって、実家の片付けは体力的にかなり重い作業です。無理をして怪我をすれば、片付けどころではなくなります。
先に言っておきたいことが2つあります。
1つ目。費用は自分たちの財布から出す必要はありません。遺品整理の費用は相続財産から支払えます。親に預貯金があるなら、そこから出すのが本来の形です。
2つ目。全部やるか、全部任せるかの二択で考えないでください。判断が要るものだけ自分たちでやって、運ぶ作業は任せる。それで十分です。

実際にきついのは「運ぶ」より「中腰」
体力の問題というと重い物を持つイメージですが、実際に体を壊すのは別のところです。
| 作業 | なぜきついか |
|---|---|
| 押し入れの整理 | 中腰と屈伸の繰り返し。腰に来る |
| 天袋の荷物出し | 脚立の上で上を向いて力を入れる。転落の危険 |
| 家具の解体 | 慣れない工具、無理な姿勢、指の怪我 |
| 階段での搬出 | 後ろ向きに下りる。踏み外しが多い |
| 庭木・物置 | 屋外で長時間。夏は熱中症、冬は転倒 |
| 大量の書類の仕分け | 座り続ける。集中力が続かない |
もっとも危険なのは脚立と階段です。高所からの転落と階段の踏み外しは、この年代では骨折につながります。骨折すれば数ヶ月動けません。
夏場の作業も要注意です。エアコンが止まっている家、電気を止めてしまった家での作業は、想像以上に体温が上がります。
1日でできる量は思っているより少ない
若い頃の感覚で計画を立てると、必ず破綻します。
60代以降が一人で1日作業した場合の目安は、45リットルのゴミ袋で10〜15袋程度です。20代なら25袋できる量が、これくらいになります。
そして翌日に響きます。2日連続で作業すると、2日目は半分も進みません。週末2日を丸ごと使うより、1日やって1週空けるほうが結果的に進みます。
日数の目安は実家の片付けは何日かかるかで間取り別に出しています。この表の日数に、1.5倍を掛けて考えてください。
兄弟で分担するときの注意
人手が増えるのは助かりますが、この年代ならではの問題があります。
体力に差がある
同じ兄弟でも、5歳違えば体力はかなり違います。持病の有無でも変わります。「同じだけ動くべきだ」という前提を置かないでください。
遠慮して無理をする
自分だけ休むと言い出しにくく、限界を超えて動いてしまいます。最初に「1時間ごとに全員休憩」と決めておくと、誰も言い出さずに済みます。
判断で揉めると体力を余計に使う
何を残すかで議論になると、作業が止まったうえに疲れだけが溜まります。着手前に基準を決めておいてください。
揉めやすいポイントと決め方は形見分けで揉めないための決め方にまとめています。
どこまで自分たちでやるか
線引きの基準は「判断が要るかどうか」です。運ぶ作業に判断は要りません。
| 内容 | 自分たちでやる | 任せる |
|---|---|---|
| 通帳・印鑑・権利証・保険証券を探す | ○ | |
| 写真・手紙・アルバムの仕分け | ○ | |
| 仏壇・位牌・遺影の扱いを決める | ○ | |
| 貴金属・骨董の有無を確認する | ○ | |
| 家具・家電の解体と搬出 | ○ | |
| 押し入れ・天袋の荷物出し | ○ | |
| 食器・衣類・日用品の処分 | ○ | |
| 庭木・物置・車の処分 | ○ | |
| 清掃 | ○ |
上の4つだけなら、座ってできます。脚立に上る必要も、重い物を運ぶ必要もありません。1〜2日で終わります。
残りを任せれば、数ヶ月かかるはずだった作業が1〜2日で片付きます。作業員が複数人で入るので、一人で10日かかる量を1日で終わらせます。
階段の搬出や脚立の作業だけを頼むこともできます。その部分の金額を先に確認してください。

費用は相続財産から出す
「業者は高い」と感じて自分たちでやろうとする方が多いのですが、その前に確認してほしいことがあります。
遺品整理の費用は、相続財産から支払うのが原則です。親の預貯金があるなら、そこから出せます。自分の年金や貯金を取り崩す前提で考える必要はありません。
口座が凍結されていて手続き前に引き出せない場合は、いったん立て替えて、相続手続きのなかで精算します。領収書を保管しておいてください。
なお、遺産分割前でも一定額を引き出せる預貯金の払戻し制度があります。
参考:預貯金の払戻し制度|法務省
注意点があります。親に借金がある可能性があり、相続放棄を考えている場合は、預貯金を使ったり遺品を処分したりしてはいけません。相続を承認したとみなされ、放棄ができなくなります。判断が済むまで動かないでください。
線引きは相続放棄をする前に、遺品に触っていいのかにあります。
費用を下げる手もある
買取で相殺する
古い家には、値がつく物が残っていることがあります。着物、食器、工具、古い家電、切手、カメラ、時計。買取に対応している業者に見てもらうと、費用から差し引かれます。
自分たちで運び出してしまうと、この機会がなくなります。捨てる前に一度見てもらうほうが得なことがあります。
自分たちでできる範囲だけ先にやる
判断が要るものと、軽い物だけ先に処理しておけば、その分見積もりが下がります。ただし無理をしてまでやる価値はありません。数万円のために骨折すれば割に合いません。
【FAQ】高齢の兄弟での実家の片付けについてよくある質問
Q. 作業中に怪我をした場合、業者の保険は使えますか。
自分たちで作業している最中の怪我は対象外です。業者が作業中に建物や家財を壊した場合は、業者の損害賠償保険が適用されます。依頼時に保険加入の有無を確認しておいてください。
Q. 一部だけ手伝ってもらうことはできますか。
できます。重い家具の搬出だけ、押し入れの荷物出しだけ、といった依頼に応じる業者があります。ただし出張費がかかるので、まとめて依頼するほうが総額は安くなります。
Q. 親がまだ存命で、施設に入る場合も同じですか。
基本的に同じです。ただし本人の意思確認が必要になるので、勝手に処分しないでください。生前整理として進める場合は、本人が判断できるうちに何を残すか聞いておくと後が楽になります。
Q. 兄弟のうち一人が「業者は嫌だ」と言っています。
その人が代わりに作業してくれるなら任せればいいのですが、たいていそうなりません。「では◯日と◯日に来てもらえますか」と具体的に聞くと、話が収まることが多いです。
Q. 何から手をつければいいですか。
貴重品の捜索が最優先です。通帳、印鑑、権利証、保険証券、年金手帳。これらが処分品に紛れると、あとで探すのが困難になります。
まとめ
- きついのは重い物より、中腰・脚立・階段。転落と踏み外しがいちばん危ない
- 1日でできる量は、若い頃の半分程度と考える。2日連続はさらに落ちる
- 兄弟でも体力に差がある。1時間ごとの休憩を最初に決めておく
- 判断が要るものだけ自分たちでやる。運ぶ作業は任せる
- 費用は相続財産から出せる。自分の貯金を取り崩す前提で考えなくていい
まず、通帳と印鑑と写真と仏壇まわり。この4つだけを目標にして、1日だけ実家に行ってください。座ってできる作業です。
それが済んだら、残りの見積もりを取る。金額が分かってから、どこまで自分たちでやるかを決めれば十分です。無理をして体を壊すより、そのほうが確実に早く終わります。
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無理をして怪我をすれば、片付けどころではなくなります。任せた場合の金額を知ってから決めてください。

