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指輪を誰が持つかで、話が止まっている。金額の問題ではないのに、譲れない。
先に、整理しておくべき区別があります。
形見分けと遺産分割は別の話です。
| 形見分け | 遺産分割 | |
|---|---|---|
| 対象 | 金銭的価値の低い、思い出の品 | 相続財産すべて |
| 性格 | 慣習。法的な手続きではない | 法律上の手続き |
| 揉める理由 | 気持ち | 金額 |
問題は、この2つが混ざることです。
母の指輪に100万円の価値があれば、それは形見分けではなく遺産分割の対象です。「思い出の品」として処理しようとすると、あとで金額の話に戻ってきます。
形見分けの前に外す3つ
分ける話を始める前に、次のものを外してください。
1 金銭的な価値があるもの
- 貴金属、宝石
- 骨董、美術品
- ブランド品、時計
- 着物のうち、価値のあるもの
買取業者に見てもらってから決めてください。価値が分かれば、遺産分割の中で調整できます。金額を知らないまま「形見」として1人が持つと、あとで問題になります。
査定の考え方は遺品の買取で費用は相殺できるかにまとめています。
2 相続手続きに必要なもの
通帳、権利証、保険証券、印鑑、契約書。これらは形見ではありません。
3 生前に本人が指定していたもの
遺言に書かれているもの、本人が口頭で誰かに約束していたもの。遺言があれば、その内容が優先されます。
4 仏壇、位牌、家系図、墓
これらは、そもそも遺産分割の対象ではありません。民法897条で、系譜、祭具、墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると定められています。被相続人が指定していればその人、慣習がはっきりしないときは家庭裁判所が定めます。
つまり「誰が引き継ぐか」の話であって、「分けたぶん相続分が減る」話ではありません。 仏壇を引き取ったからといって、他の財産の取り分が減ることはありません。ここを混ぜると話がこじれます。
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形見分けはいつやるか
決まりはありません。ただ、慣習として目安になる時期があります。
| 宗派・信仰 | 目安 |
|---|---|
| 仏式 | 四十九日の忌明け後 |
| 神式 | 五十日祭の後 |
| キリスト教 | 特に決まりはない。1か月後の召天記念日などに合わせることがある |
四十九日に集まる機会を使って決める家が多いのは、全員が顔を合わせるからです。
ただし、賃貸の退去期限があるなら、慣習より期限が優先です。 家賃は待ってくれません。集まれないなら、下の3番目の方法(写真で共有)で進められます。
形見分けの決め方は4つ
残ったものを、どう分けるか。実際に使われている型です。
1 順番に選ぶ
くじ引きで順番を決めて、1人ずつ好きなものを1点選ぶ。全員が選んだら、また1巡目の人から。
| 向いている | 品数が多い。全員が集まれる |
| 利点 | 手続きが単純。不満が出にくい |
| 注意 | 1巡目に人気が集中する。順番の決め方を先に合意する |
もっとも使われている方法です。
2 希望を出してから調整する
全員がほしいものを紙に書き出し、重なったところだけ話し合う。
| 向いている | 遠方で集まれない |
| 利点 | 重ならないものは即決できる |
| 注意 | 重なった品で止まる |
実際には、希望が重なるものは全体の一部です。ほとんどは重ならず、そこだけ先に決まります。
3 写真に撮って共有し、期限を切る
すべての品を写真に撮って全員に送り、期限までに希望を出してもらう。
| 向いている | 遠方、海外、集まる日程が取れない |
| 利点 | 誰も現地に行かなくていい |
| 注意 | 写真では大きさや状態が伝わらない |
片付けを進めながら並行できるのが利点です。期限を切らないと、いつまでも決まりません。
4 現物を分けず、記録だけ残す
写真やデータにして全員が持ち、現物は1人が保管するか処分する。
| 向いている | 写真、アルバム、手紙、日記 |
| 利点 | 分けようがないものに使える |
| 注意 | 現物を誰が持つかは別に決める |
写真やアルバムは、この方法で解決することがほとんどです。扱いは遺品の写真とアルバムの捨て方にまとめています。
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揉めやすいのは品物ではない
実際に争いになるのは、品物そのものより次の点です。
誰が片付けたか
現地に何度も通った人と、一度も来なかった人。作業の負担が偏ったまま形見分けをすると、必ず不満が出ます。
誰が費用を出したか
遺品整理の費用は原則として相続財産から支払うものです。立て替えた人がいるなら、先に精算の話をしてください。
誰が親の面倒を見たか
介護をした人としなかった人。ここは形見分けでは解決しません。持ち出すと話が長くなるだけなので、分けるときは切り離してください。
先に処分されたこと
「あれはどうした」が出てくると、そこから崩れます。片付ける前に部屋ごとの写真を撮っておいてください。すでに処分されてしまった場合の扱いは兄弟の遺品を勝手に処分するとトラブルになるかにあります。
形見をもらったとき、断りたいとき
分ける側だけでなく、受け取る側でも迷います。
もらったらお礼はどうするか
形見分けは香典返しのような贈答ではないので、金品を返す必要はありません。 のし、袋、表書きも本来は不要です。
その代わり、受け取ったことと感謝を伝えてください。電話でも手紙でも構いません。手紙にするなら、いつ何を受け取ったかと、どう使うつもりかを書けば足ります。丁寧すぎる形にすると、渡した側が恐縮します。
いらないと言いたいとき
断って構いません。形見分けに応じる義務はありません。
言い方だけ気をつけてください。「いらない」ではなく「私のところでは置き場所がないので、使ってもらえる方に」と伝えると角が立ちません。断ったものを勝手に送りつけられた場合も、保管の義務はありません。
こちらから要求されたとき
親族から「あれがほしい」と言われた場合、1人の判断で渡さないでください。相続人以外への譲渡は、相続人全員の合意が前提です。
「相続人で決めることになっているので、確認してから返事します」で止められます。
相談者叔母から母の指輪がほしいと言われました。断りにくいです



その場で答えなくて大丈夫です。相続人全員で決める話だと伝えてください



勝手に渡すと問題になりますか?



金額のあるものだと、あとで相続分の話に戻ってきます。まず査定を取ってください
すでに揉めている場合
1 何について揉めているのかを分ける
品物の話なのか、金額の話なのか、負担の話なのか?混ざったまま話すと解決しません。
2 金額のあるものは遺産分割に戻す
価値のあるものは、査定を取って遺産分割の中で調整してください。感情の話から、計算の話に移せます。
3 第三者を入れる
親族の中の中立な人、司法書士、弁護士。当事者だけで続けるほど、話は固くなります。
4 遺産分割調停
まとまらない場合は家庭裁判所の調停があります。ただし、形見分けだけを調停で扱うことは通常しません。遺産分割全体の中で扱います。
形見分けの決め方でよくある質問
- 形見分けに税金はかかりますか?
社会通念上、金銭的価値の低いものであれば通常は問題になりません。価値のあるものは相続財産として扱われ、遺産分割と相続税の対象になります。
- 相続放棄をしても形見分けはできますか?
価値のあるものを受け取ると、民法921条1号の処分にあたり単純承認とみなされる可能性があります。放棄を検討中なら受け取らないでください。
- 仏壇を引き取ると相続分は減りますか?
減りません。仏壇や位牌は民法897条の祭具にあたり、祭祀を主宰する人が承継します。遺産分割とは別の枠です。
- 四十九日を過ぎてからにすべきですか?
決まりはありません。賃貸で退去期限がある場合は先に進める必要があります。
- 親族から「これがほしい」と言われました。
相続人以外への譲渡は、相続人全員の合意が前提です。1人の判断で渡さないでください。
- 誰も要らないと言われました。
供養に出す、買取に出す、処分する。いずれも選べます。あとから言われないよう、写真と記録を残してください。
- 形見分けはいつやりますか?
決まりはありません。仏式なら四十九日の忌明け後、神式なら五十日祭の後が目安です。賃貸の退去期限がある場合は、そちらが優先です。
- 形見分けにお礼やお返しは必要ですか?
金品を返す必要はありません。のしや表書きも本来は不要です。受け取ったことと感謝を伝えれば足ります。
- 形見をもらうのを断ってもいいですか?
断って構いません。応じる義務はありません。「置き場所がないので使ってもらえる方に」と伝えると角が立ちません。
- 着物や時計はどう扱いますか?
まず査定を取ってください。価値のあるものは形見分けではなく遺産分割の対象です。金額を知らないまま1人が持つと、あとで問題になります。
- 兄弟が勝手に売ってしまいました。
片付けの前後で何がなくなったかを確かめてください。処分されたものの扱いは兄弟の遺品を勝手に処分するとトラブルになるかにまとめています。
この記事の要点
- 形見分けと遺産分割は別。金銭的価値のあるものは遺産分割の対象になる
- 仏壇、位牌、墓は民法897条の祭祀財産で、どちらとも別枠。引き取っても相続分は減らない
- 時期は四十九日の忌明け後が目安。ただし賃貸の退去期限があるならそちらが優先
- 分け方は4つ。順番に選ぶ、希望を出して調整、写真で共有、記録だけ残す
- もらってもお礼の品は不要。断るのも自由で、応じる義務はない
まず、価値のあるものを査定に出してください。金額が分かれば、感情の話から計算の話に移せます。
そして、片付ける前に部屋ごとの写真を撮ってください。これがあるかどうかで、あとの話し合いがまったく変わります。
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