この記事でわかること
- 法律上、費用の負担割合が決まっていないこと
- 祭祀承継者とは何か。長男でなければいけないのか?
- 兄弟で分けるときに揉めない出し方
- 話し合う前に用意しておくもの
墓じまいに100万円近くかかると分かった。自分が名義を継いでいるが、兄弟にも出してもらえるのか?それとも自分が全部払うのか?
先に法律上の位置づけを書きます。
墓じまいの費用について、法律は誰がいくら払うかを定めていません。
民法が定めているのは「祭祀に関する権利は承継者が承継する」ということだけです。費用の負担割合は書かれていません。つまり、請求権もなければ、支払義務もないというのが出発点です。
だから話し合いになります。そして話し合いは、金額が出ていないうちに始めると必ず揉めます。
墓じまいの費用は祭祀承継者が払うのか?
まず前提を整理します。
墓を継ぐ人のことを祭祀承継者といいます。民法では次の順で決まります。
| 順序 | 決まり方 |
|---|---|
| 1 | 亡くなった方の指定(遺言や生前の意思表示) |
| 2 | 指定がなければ、その地方の慣習 |
| 3 | 慣習も明らかでなければ、家庭裁判所が決める |
長男でなければいけないという決まりはありません。次男でも、娘でも、血縁がない人でもなれます。
そして重要なのは、祭祀承継者は1人だけということです。兄弟3人で共同承継という形は取れません。名義は誰か1人になります。
この「1人しか名義になれない」という点が、費用を誰が払うかの話をこじらせます。名義人だけが手続きを進められるのに、費用は分けたい、という構図になるからです。

墓じまいの費用を実際にどう分けているか
法律が決めていない以上、決め方は3通りしかありません。
- 名義人が全額出す
手続きも判断も1人でできます。ただし後から「勝手に決めた」と言われる余地が残ります
- 兄弟で均等に分ける
一番揉めにくい形です。ただし全員の合意が要るので、時間はかかります
- 相続で多く受け取った人が多く出す
実家を相続した人が墓の費用も持つ、という分け方です。筋は通りますが、感情の問題が残りやすいです
どれが正しいということはありません。先に決めておくことが大事で、金額が出てから決めるのが順番です。
費用を話し合う前に用意するもの
金額が分からないまま「墓じまいをしたい、費用を出してほしい」と言うと、相手は判断できません。
撤去費、離檀料、改葬先の費用を分けて出します。合計だけだと納得されません
合祀と個別で金額が大きく違います。相手に選ぶ余地を残すと話が進みます
全額を求めるところから始めると、相手は身構えます
墓じまいには法律上の期限がないので、急がせる理由がありません
内訳の作り方は墓じまいの費用相場に、項目ごとの相場を出しました。
合祀にすると他の方の遺骨と混ざるため、あとから個別に取り出せません。安いという理由で先に決めて事後報告にすると、そこから関係が壊れます。金額の話より先に、この点を共有してください。
墓の名義が親のままの場合
まだ承継の手続きをしていない場合は、費用の話より先にやることがあります。
墓の名義が亡くなった親のままだと、返還の手続きに進めません。先に承継の届出が必要です。八王子市のように、承継の申請に「使用者が亡くなった日から2年以内」という期限を設けている自治体があります。
そして承継の届出をした時点で、その人が名義人になります。費用の話をする前に名義だけ動かすと、相手は「もう決めたのだろう」と受け取ります。先に相談してから届け出てください。
霊園ごとの承継の手続きは霊園から探すにまとめました。
墓じまいの費用を出せる人がいないとき
兄弟に頼めない、自分にも余裕がない、という場合の選択肢は限られます。
総額を下げる方法と、まとまったお金を作る方法は墓じまいのお金が用意できないときにできることに書きました。改葬先を変えるだけで30万円から100万円変わります。
墓じまいの費用の負担でよくある質問
- 兄弟に費用を請求できますか?
法律上の請求権はありません。話し合いになります。ただし相続で財産を分けたときの割合を持ち出すと、納得を得やすいことがあります。
- 祭祀承継者を後から変えられますか?
霊園の承継手続きで名義を移せます。ただし霊園ごとに資格要件があり、血縁の範囲が決まっていることがあります。
- 遺言で墓の費用を指定できますか?
祭祀承継者の指定はできます。費用の負担についても遺言に書くことはできますが、法的な拘束力は財産の分け方ほど強くありません。
- 親が生前に払っておくことはできますか?
できます。生前に墓じまいを済ませるか、費用を遺しておく方法があります。子の世代で揉める要素が減ります。
まとめ
- 法律は費用の負担割合を定めていない。請求権も支払義務もない
- 祭祀承継者は1人だけ。長男でなくてもよい
- 話し合いは金額を出してから。総額だけでなく内訳を出す
- 名義を動かす前に相談する。先に届け出ると決定と受け取られる
話し合いを始めるには、総額がいくらになるかを先に出す必要があります。そして支払いの原資として実家を考えているなら、その金額も併せて確認しておいてください。両方の数字が揃ってから相談するほうが、結論が早く出ます。

