この記事でわかること
- 自分の財布から出さずに遺品整理を進める方法がわかる
- 買取で費用が相殺される仕組みと、その現実的な効果がわかる
- 分割払いや後払いに対応している業者があることがわかる
- 支払わずに済む唯一の方法と、その条件がわかる
見積もりを取ったら20万円だった。とても出せる金額ではない。かといって放置すれば家賃が積み上がるし、実家なら固定資産税がかかり続ける。
先に伝えておきたいことがあります。多くの人が、自分の給料や貯金から出す前提で考えています。その前提は、たいていの場合、正しくありません。
遺品整理の費用は、原則として相続財産から支払うものです。そして、支払う経路は1つではありません。
経路は5つあります。上から順に確認してください。

① 相続財産から支払う
いちばん基本的な形です。
遺品整理の費用は、亡くなった方の財産から支払うのが原則です。預貯金があるなら、そこから出せます。自分の財布は関係ありません。
口座が凍結されている場合
金融機関が死亡を知ると口座は凍結されます。ただし、遺産分割前でも一定額を引き出せる制度があります。
参考:預貯金の払戻し制度|法務省
相続人が一人なら手続きは簡単です。遺産分割協議が不要なので、必要書類をそろえれば引き出せます。
いったん立て替える場合
先に自分で払って、相続手続きのなかで精算する形もよくあります。領収書は必ず保管してください。あとから相続財産から回収する根拠になります。
一人っ子の場合の進め方は一人っ子で実家の片付けが無理だと思ったらにまとめています。
② 買取で相殺する
これが、実際にいちばん効く手です。
遺品整理業者の多くは買取にも対応しており、値のついた物の金額を作業費から差し引きます。
値がつきやすいもの
| 品目 | 補足 |
|---|---|
| 着物・帯 | 状態が良ければまとまった額になる |
| 和食器・骨董・掛け軸 | 作家物や古いものは要査定 |
| 工具・農機具 | 電動工具は需要が高い |
| カメラ・レンズ | フィルムカメラも値がつく |
| 時計・貴金属 | 壊れていても金として値がつく |
| 切手・古銭・記念硬貨 | 額面以上になることがある |
| 古い家電(動作品) | 年式による |
| ブランド品・バッグ | 状態次第 |
逆に、値がつきにくいのは、量産品の家具、一般的な食器、衣類(着物を除く)、大型家電の古い型です。
一軒家や古い家ほど、値のつく物が眠っている可能性が高くなります。捨てる前に一度見てもらってください。
仕組みと注意点は遺品整理は買取の相殺で安くなるかに詳しく書いています。
③ 分割払い・後払いに対応する業者を使う
すべての業者ではありませんが、支払い方法に幅がある業者があります。
- クレジットカード払い(分割・リボが選べる)
- 自社の分割払い
- 後払い(作業後に振込)
- ローン会社との提携
見積もりの段階で「支払い方法は何に対応していますか」と聞いてください。聞かなければ一括前払いを案内されることがほとんどです。
不動産の売却代金が入ってから払いたい、保険金が下りてから払いたい。そうした事情を伝えると、支払い時期を調整してくれる業者もあります。
対応状況は遺品整理を分割払いできる業者はあるかにまとめています。
④ 保険と自治体の制度を確認する
大家の孤独死保険
賃貸で発見が遅れた場合、大家が加入している少額短期保険から原状回復費用が補填されることがあります。これがあると、相続人への請求額が下がります。
管理会社に「大家さんは孤独死の保険に入っていますか」と聞くだけです。孤独死の少額短期保険は片付け費用に使えるかに詳しく書いています。
故人の火災保険
借家人賠償責任の特約が付いていれば、部屋の損害に対する補償が受けられる場合があります。
自治体の制度
遺品整理そのものを補助する制度はほとんどありません。ただし、粗大ごみ手数料の減免制度がある自治体はあります。市区町村の窓口に確認してください。
遺品整理の補助金は自治体にあるかで実態をまとめています。
⑤ 相続放棄する
支払わずに済む唯一の方法です。
遺品整理費用や原状回復費用は、亡くなった方の債務として相続されます。相続放棄をすれば、支払う義務はなくなります。
生活保護を受けていた、借金があった、家賃を滞納していた。そうした事情があるなら、そもそも相続すべきかどうかから考えてください。
ただし条件が2つあります。
- 自分が相続人だと知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述すること
- 部屋の物に一切手を付けていないこと
2番が決定的です。民法921条により、相続財産を処分すると単純承認したものとみなされます。片付けを始めてしまうと、放棄できなくなる可能性があります。
出典:民法第921条(法定単純承認)|e-Gov法令検索
お金がないから自分で片付けよう、と動き始めた時点で、この選択肢は消えます。順番を間違えないでください。
線引きは相続放棄をする前に、遺品に触っていいのかにあります。
買取で相殺されると、見積もりの金額そのものが下がります。まず総額を確かめてください。

費用そのものを下げる手
支払い方法とは別に、金額自体を下げる方法もあります。
軽いものを自分で処分する
衣類、書類、食器、日用品。判断が要らないものを先に減らせば、見積もりが下がります。ただし大型家具と家電は無理をしないでください。
必要な範囲だけ依頼する
1階だけ、大型家具だけ、というように区切って依頼できます。
相見積もりを取る
同じ部屋でも業者によって差が出ます。3社が目安です。
繁忙期を外す
年末年始、3〜4月、お盆前後は割高になることがあります。
やってはいけないこと
放置する
いちばん高くつきます。賃貸なら家賃が発生し続け、持ち家なら固定資産税と光熱費がかかり続けます。建物が傷めば売却額も下がります。
極端に安い業者に飛びつく
「無料回収」を掲げて後から高額請求をする事例が報告されています。また、無許可業者による不法投棄は、依頼した側が責任を問われる可能性があります。
見積もりを取らずに諦める
金額を知らないまま「払えない」と決めてしまう人が多くいます。買取で相殺された結果、想定の半分だったというケースもあります。
【FAQ】遺品整理のお金がないときのよくある質問
Q. 相続財産から払うと、相続税の計算に影響しますか。
葬式費用は債務控除の対象になりますが、遺品整理費用は原則として対象外とされています。金額が大きい場合は税理士に確認してください。領収書は保管しておいてください。
Q. 兄弟が費用を出してくれません。
法的には相続人全員に負担義務があります。立て替えた場合、相続分に応じて請求できます。領収書と記録を残してください。
Q. 買取で全額まかなえることはありますか。
まれにあります。着物や骨董が大量にある家では、費用を上回ることもあります。ただし期待しすぎないでください。多くは数万円の減額にとどまります。
Q. 生活保護を受けています。片付け費用の支援はありますか。
葬祭扶助は葬儀に直接かかる費用のみで、片付けは対象外です。詳しくは生活保護を受けていた親が死亡、部屋の片付け費用は誰が払うかに書いています。
Q. 分割払いにすると総額は高くなりますか。
クレジットの分割やリボは手数料がかかります。自社分割の場合は無金利のこともあります。条件を確認してください。
まとめ
- 遺品整理費用は原則相続財産から支払う。自分の財布から出す前提で考えなくていい
- 買取で相殺されると、数万円下がることがある。捨てる前に見てもらう
- 分割払いや後払いに対応する業者がある。聞かなければ案内されない
- 大家の孤独死保険、故人の火災保険を必ず確認する
- 支払わずに済む唯一の方法は相続放棄。ただし手を付ける前に判断する
まずやることは、業者を探すことでも、自分で片付け始めることでもありません。亡くなった方に預貯金がいくら残っているか、そして負債がないかを確認することです。
それが分かってから、相続するか放棄するかを決める。相続すると決めたなら、そこで初めて見積もりを取る。買取を含めた金額を見れば、想定より下がることもあります。
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払えないと決める前に、金額を知ってください。想定の半分だったというケースがあります。

