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親族が亡くなったあと、大家さんや管理会社から遺品整理と原状回復の費用を請求された。金額が想像より大きい。内訳を見ても「一式」としか書かれていない。
このまま払うべきなのか?
請求されたものを、そのまま全額払う必要はありません。
理由は3つあります。ひとつは、通常の使用による劣化は条文の段階で借主の負担から外れていること。ひとつは、業者を大家側が手配していた場合、こちらが選べば安くなる可能性があること。そしてもうひとつ、そもそも請求の根拠が示されていない状態では、金額を確認できないからです。
まずやることは、支払いでも交渉でもなく、明細を出してもらうことです。
通常損耗が外れるのは、ガイドラインではなく条文
交渉のときに効くのはここです。民法621条にこう書かれています。
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用および収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
通常の使用による損耗と経年変化は、義務の定義から除かれています。 2020年4月の民法改正で明文化された部分です。
国土交通省のガイドラインは、この条文をどう当てはめるかの指針です。「ガイドラインでは」と言うより「民法621条では」と言ったほうが、話が短く済みます。
参考:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン|国土交通省
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大家から請求されたら、最初に確認する5つ
① 内訳の明細を出してもらう
「遺品整理・原状回復費用一式 ◯◯万円」だけの請求には応じないでください。項目ごとに、何をいくらで行ったのかを求めます。これは正当な要求です。
② 作業前後の写真を求める
何がどれだけあったのか、どこが汚れていたのかを確認します。写真がない請求は、内容を検証できません。
③ 契約書を確認する
原状回復の特約、残置物の処理に関する条項、業者指定の有無を見ます。契約書が手元になければ、管理会社に写しを求めてください。
④ 敷金がいくら充当されたかを確認する
敷金は原状回復費用に充てられます。差し引いた後の請求になっているかを見ます。
民法622条の2で、貸主は賃貸借が終わって部屋の返還を受けたとき、敷金から借主の債務額を差し引いた残額を返さなければならないと定められています。名目が保証金でも預り金でも、債務を担保する目的で預けた金銭であれば同じ扱いです。
だから請求書は、敷金を差し引いたあとの金額でなければ筋が通りません。 敷金の額と、そこから何にいくら充てたのかを聞いてください。
⑤ 保険が使われていないかを確認する
賃貸で親が亡くなったときに、そもそも何にいくらかかるのかを先に押さえておくと、請求の妥当性が判断しやすくなります。総額の内訳は賃貸で親が死亡したら退去はいつまでかにまとめました。
大家が孤独死保険に入っている場合、そこから補填されているのに満額請求されているケースがあります。「保険は適用されていますか」と聞いてください。
賃貸の原状回復で借主負担になるもの・ならないもの
国土交通省のガイドラインが判断の基準になります。
参考:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン|国土交通省
| 費目 | 負担の考え方 |
|---|---|
| 残置物(家具・家電・生活用品)の撤去 | 借主負担 |
| 明らかな汚損・破損の修復 | 借主負担 |
| 特殊清掃・消臭(孤独死の場合) | 借主負担が原則 |
| 日焼けによるクロスの変色 | 貸主負担(通常損耗) |
| 家具の設置跡、へこみ | 貸主負担(通常損耗) |
| 画鋲・ピンの穴 | 貸主負担が原則 |
| 設備の寿命による交換(給湯器・エアコンなど) | 貸主負担(経年劣化) |
| 汚損と無関係な範囲のリフォーム | 貸主負担 |
| 次の入居者のためのハウスクリーニング | 特約があれば借主負担のことがある |
請求書を上の表に当てはめて、貸主負担のものが混ざっていないかを見てください。よくあるのは、部屋全体のクロス張り替えや、フローリング全面の交換です。汚損が一部にとどまっているなら、その範囲だけが借主負担です。
なお、通常損耗まで借主負担とする特約が契約書にある場合もありますが、そうした特約は、内容が明確に示され借主が理解して合意していることなどが必要とされ、常に有効とは限りません。金額が大きいなら確認する価値があります。
大家が手配した遺品整理業者を断れるか
契約書に業者指定の特約がなければ、こちらで業者を選べます。
大家や管理会社が提携業者を手配するのは、そのほうが手間がかからないからです。ただしその分、紹介手数料が乗っていることがあります。
対応の仕方はこうです。
まだ作業が行われていない場合
「こちらで業者を手配します」と伝えてください。同時に、大家側の見積もりももらっておき、自分で取った見積もりと比較します。
このとき、大家側の要求(作業範囲、期限、原状回復の水準)を確認しておくことが重要です。安い業者に頼んでも、大家が求める水準に達していなければやり直しになります。
すでに作業が終わっている場合
事後になるため、業者の変更はできません。ただし、金額の妥当性は争えます。別の業者に同じ条件で見積もりを出してもらい、相場から大きく外れていれば交渉材料になります。
契約書に業者指定の特約がある場合
その業者を使う必要があります。ただし、その場合でも作業範囲と金額の内訳は確認できます。
大家が手配した業者しか選べないという決まりはありません。同じ作業で別の見積もりを取れば、交渉の根拠になります。
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遺品整理費用の減額を求めるときの進め方
感情的に「高すぎる」と言っても動きません。根拠を示して、項目単位で交渉します。
ステップ1:明細を項目ごとに分ける
上の表に当てはめて、借主負担・貸主負担・判断が分かれるもの、の3つに分類します。
ステップ2:貸主負担のものを指摘する
「クロスの張り替えについて、汚損があったのは和室のみと認識しています。他の部屋の張り替えは通常損耗にあたるため、負担の対象外と考えますがいかがでしょうか」
このように、箇所と理由をセットで書きます。ガイドラインを根拠として挙げると、話が早くなります。
ステップ3:相見積もりを提示する
同じ作業内容で他社の見積もりを取り、金額差を示します。これが最も効きます。
ステップ4:書面かメールでやり取りする
電話だけで済ませないでください。合意した内容は必ず記録に残します。
ステップ5:折り合わなければ相談する
金額が大きく、話がまとまらない場合は、自治体の無料法律相談や法テラス、消費生活センターに相談してください。無料で、こちらの言い分が通る筋のものかどうかを判断してもらえます。
支払ってしまってから取り戻すのは難しくなります。納得できないうちは、いったん保留にして構いません。
相談者明細を出してほしいと言ったら、関係が悪くなりませんか?



内訳を求めるのは当然の要求です。それで態度が変わる相手なら、金額のほうを疑ったほうがいい



どう切り出せばいいでしょうか?



「相続財産から支払うので、税務の説明ができる形の明細をください」と言えば角が立ちません
請求された金額を払えない場合
そのまま放置すると、保証会社や大家から訴訟を起こされることがあります。早めに動いてください。
① 相続財産から支払う
亡くなった方の預貯金があれば、そこから出すのが本来の形です。相続手続きを進めてください。
② 相続放棄を検討する
孤独死だった場合は費用の性質が変わります。負担の分かれ目は孤独死の原状回復費用は誰が払うのかを見てください。
負債のほうが大きいなら、相続放棄という選択があります。ただし部屋の物に手を付けていると放棄できなくなる可能性があるので、状況を確認してください。期限は3ヶ月です。
③ 分割を相談する
一括で無理なら、その旨を伝えて分割を相談します。連絡を取らないまま放置するのが一番悪い対応です。
④ 連帯保証人の状況を確認する
保証人がいる場合、請求はそちらにも行きます。ここで確認してほしいのが、契約書に極度額が書かれているかどうかです。
契約書を開いて「極度額」または「限度額」の記載を探してください。2020年4月1日以後に結んだ契約なら、この金額の記載がなければ保証契約は効力を生じません(民法465条の2)。書かれていれば、保証人の負担はその額までです。
確認の手順は連帯保証人に部屋の荷物を撤去する義務はあるかにあります。
賃貸の遺品整理費用を請求されたときのよくある質問
- 一式としか書かれていない請求書でも払う必要がありますか?
内訳を求めてください。何をいくらで行ったのかが示されない状態では、金額が妥当かどうかを判断できません。明細を求めるのは正当な要求です。
- クロスを全部張り替えると言われました。
汚損が一部なら、その範囲だけが借主の負担です。通常の使用による損耗と経年変化は、民法621条で原状回復義務から除かれています。
- 敷金は請求額から引かれますか?
引かれます。民法622条の2で、貸主は部屋の返還を受けたとき、敷金から債務額を差し引いた残額を返す義務を負います。差し引き後の金額かどうかを確認してください。
- 大家が手配した業者を断れますか?
契約書に業者指定の特約がなければ、こちらで選べます。すでに作業が終わっている場合は変更できませんが、金額の妥当性は争えます。
- 連帯保証人はどこまで払うのですか?
契約書に書かれた極度額までです。2020年4月1日以後に結んだ契約で極度額の定めがなければ、民法465条の2により保証契約自体が効力を生じません。
- 金額で折り合いません。どこに相談できますか?
自治体の無料法律相談、法テラス、消費生活センターです。請求書と契約書を持って行けば、争える筋かどうかを判断してもらえます。
- 一括では払えません。
相続財産から出すのが本来の形です。それでも足りない場合は、放置せずに分割を相談してください。連絡を絶つのが一番よくない対応です。
この記事の要点
- 一式としか書かれていない請求には応じない。まず項目ごとの明細と、作業前後の写真を求める
- 通常の使用による損耗と経年変化は、民法621条で原状回復義務から除かれている
- 敷金を差し引いたあとの金額かどうかを確認する(民法622条の2)
- 業者指定の特約がなければ、業者はこちらで選べる。相見積もりが交渉でいちばん効く
- 連帯保証人の負担は契約書の極度額まで。2020年4月1日以後の契約で記載がなければ保証契約は無効
金額の妥当性を判断するには、比較対象が必要です。同じ作業内容で別の業者に見積もりを出してもらえば、相場から外れているかどうかがすぐ分かります。
見積もりを取ること自体に費用はかかりませんし、依頼する義務も生じません。請求書を前に悩んでいる時間があるなら、まず他社の金額を知ってください。
大家から請求された遺品整理の費用について次に読む記事
続けて読むなら、このあたりです。
請求書を前に悩んでいる時間があるなら、他社の金額を知るほうが早く進みます。
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