この記事でわかること
- 連絡の取れない相続人の住所を調べる方法がわかる
- 手紙を出しても返事がない場合の進め方がわかる
- 行方不明の場合に使える2つの制度がわかる
- 費用と期間の目安がわかる
実家を売りたいが、相続人の一人と連絡が取れない。何十年も会っていない兄弟、あるいは会ったこともない親族。
まず知っておいてほしいことがあります。
遺産分割には相続人全員の合意が必要です。 一人でも欠けていると、協議は成立しません。名義変更も売却もできません。
ただし、連絡が取れないだけなら、たいていは解決できます。 戸籍から住所を辿れるためです。
本当に困るのは、住所は分かるのに返事がない場合と、住所そのものが不明な場合です。それぞれに対処法があります。

まず住所を調べる
連絡先を知らなくても、戸籍から辿れます。
- 相続人を確定する
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を集めます。ここに、誰が相続人かが記載されています。
- 戸籍の附票を取る
相続人が特定できたら、その人の戸籍の附票を請求します。戸籍の附票には、その戸籍が作られてからの住所の履歴が記載されています。
相続手続きのために必要であることを示せば、他人の附票でも請求できます。窓口で相続関係の分かる書類を提示してください。
- 住民票を取る
附票で判明した住所地で住民票を取れば、現在の居住実態が確認できます。
これで、9割方は住所が分かります。費用は1通数百円です。
手紙を出す
住所が分かったら、まず手紙を出します。
いきなり法的な文書を送ると身構えられるので、最初は普通の手紙が有効です。
書くこと
- 自分が誰か(続柄をはっきり書く)
- 誰が亡くなったか、いつか
- 相続の手続きが必要になっていること
- 具体的に何をしてほしいか(署名と印鑑証明書など)
- 連絡先と、返信用の封筒
書かないほうがいいこと
- 一方的に決めた分割案
- 期限を切った催促
- 責める調子の表現
相手にとっては突然の話です。何十年も会っていない親族から、実印を求める手紙が届く。警戒するのが普通です。
まず事情を説明して、相手に不利益がないことを伝えてください。
返事がない場合
内容証明郵便を送る
いつ、誰に、どんな内容の文書を送ったかが記録に残ります。相手に届いたことも証明できます。
これで動く方もいますし、少なくとも「連絡を試みた」という事実が残ります。後の手続きで使えます。
弁護士や司法書士から連絡してもらう
専門家の名前で連絡が来ると、対応が変わることがあります。放置してはいけない話だと伝わるためです。
家庭裁判所の調停
話し合いに応じない場合、遺産分割調停を申し立てられます。裁判所から呼出状が届くため、無視しづらくなります。
まとまらなければ審判に移行し、裁判所が分割方法を決めます。期間は1年以上かかることがあります。
住所そのものが分からない場合
戸籍の附票を辿っても居所が判明しない、あるいは住民票の住所に住んでいない。この場合は2つの制度があります。
不在者財産管理人
行方不明の相続人に代わって、財産を管理する人を家庭裁判所が選任します。
選任された管理人が、家庭裁判所の許可を得て遺産分割協議に参加します。これで協議が成立し、売却も可能になります。
| 内容 | |
|---|---|
| 申立先 | 不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 申立人 | 利害関係人(他の相続人など) |
| 予納金 | 数十万円かかることがある |
| 期間 | 選任まで数ヶ月 |
参考:不在者財産管理人選任|裁判所
予納金が必要です。管理人の報酬に充てられ、不在者の財産から支払えない場合は申立人の負担になります。
失踪宣告
生死不明の状態が7年以上続いている場合、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てられます。宣告されると死亡したものとみなされ、その人の相続人が代わりに手続きに加わります。
危難失踪の場合は1年です。
7年という要件があるため、使える場面は限られます。単に連絡が取れないだけでは対象になりません。
「実印を押してくれ」より「売ると一人あたりいくら」のほうが、相手も判断しやすくなります。

放置するほど難しくなる
時間が経つと状況は悪化します。
相続人が増える
放置している間に相続人の誰かが亡くなると、その人の相続人が加わります。兄弟3人だったものが、10年後には甥や姪を含めて十数人になることがあります。
人数が増えるほど、全員の同意を得るのは難しくなります。
相続登記の義務
2024年4月から相続登記は義務です。3年以内に行わないと10万円以下の過料の対象になります。
分割がまとまらない場合は、相続人申告登記で義務だけ先に果たせます。詳しくは実家の名義を親のまま放置しているにまとめています。
費用は発生し続ける
固定資産税、管理費、火災保険。手続きが止まっている間も出ていきます。
進める順番
- 戸籍と附票で住所を調べる(数千円、2週間〜1ヶ月)
- 普通の手紙を出す
- 返事がなければ内容証明
- それでも動かなければ、調停か不在者財産管理人
- 並行して、相続人申告登記で義務を果たしておく
1と2は自分でできます。ここで解決するケースが多くあります。
3以降に進む場合は、弁護士か司法書士に相談してください。手続きが複雑で、書類の不備で時間を失いやすい領域です。
売却の準備は並行して進められる
手続きが止まっている間も、査定を取ることはできます。
金額が分かっていると、次の場面で役に立ちます。
- 連絡が取れた相続人に、具体的な金額を示して同意を得やすくなる
- 不在者財産管理人の申立てで、財産の内容を説明できる
- 調停で分割案を示せる
「よく分からないが実印を押してくれ」より、「売却すると一人あたりいくらになる」のほうが、話は早く進みます。
【FAQ】相続人と連絡が取れない場合のよくある質問
Q. 他人の戸籍を取れますか。
相続手続きに必要な場合、正当な理由として認められます。自分と亡くなった方、亡くなった方と相手の関係が分かる書類を持参してください。
Q. 相手が海外に住んでいます。
在外公館で在留証明と署名証明を取ってもらう形になります。時間はかかりますが手続きは可能です。
Q. 相手が認知症のようです。
判断能力がない場合、成年後見人の選任が必要になります。連絡が取れないのとは別の手続きです。
Q. 一人だけ除いて協議できませんか。
できません。全員の合意がないと協議は無効になります。
Q. 費用は誰が負担しますか。
申立人が立て替えるのが通常です。遺産分割の際に精算する取り決めをしておくとよいでしょう。
まとめ
- 相続人全員の合意がないと、遺産分割も売却もできない
- 住所は戸籍の附票から辿れる。数千円で調べられる
- 返事がない場合は、内容証明、遺産分割調停の順で進む
- 行方不明なら不在者財産管理人。予納金が数十万円かかることがある
- 放置すると相続人が増えて、さらに難しくなる
まず戸籍の附票を取ってください。それだけで住所が分かることがほとんどです。
そして手続きと並行して、実家がいくらになるかを調べておいてください。金額が示せると、相手も判断しやすくなり、話が前に進みます。
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手続きが止まっている間も、金額を調べることはできます。示せる数字があると話が前に進みます。

