この記事でわかること
- 苦情の内容ごとに、何をどの順で対応すればいいかがわかる
- 苦情を放置すると、行政の手続きがどう進むかがわかる
- 遠方でも対応できる方法がわかる
- 対応を続けるか手放すかの判断材料がわかる
隣家の方から電話が来た。実家の庭木が越境している、雑草がひどい、屋根材が飛んできた。
まず知っておいてほしいことがあります。
苦情は、行政の手続きが始まる入口です。 近隣から市区町村へ連絡が入ると、そこから助言・指導、勧告と進みます。勧告を受けると住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がります。
そして、苦情の段階で対応すれば、そこで止まります。 連絡をくれた時点では、相手もまだ穏当に済ませようとしています。ここでの対応が分かれ目です。

苦情の内容別に見る
対応の難易度と緊急度が違います。
| 苦情の内容 | 緊急度 | 対応 |
|---|---|---|
| 庭木・雑草が越境している | 中 | 剪定・草刈り。越境部分は必ず切る |
| 落ち葉・ごみが飛んでくる | 中 | 清掃と、飛散源の除去 |
| 屋根材や外壁材が飛んだ | 高 | すぐ業者へ。損害賠償の可能性がある |
| 建物が傾いている、崩れそう | 高 | 応急措置。専門家の判断が必要 |
| 害虫・害獣が出る | 高 | 駆除と侵入口の封鎖 |
| 不審者が出入りしている | 高 | 施錠の確認。警察へ連絡 |
| 悪臭がする | 高 | 原因の特定。動物の死骸や生ごみの可能性 |
緊急度が高いものは、人に被害が及ぶ可能性があるものです。
屋根材が飛んで隣家の車や人に当たれば、所有者として損害賠償を求められることがあります。土地工作物責任といって、建物の設置や保存に欠陥があった場合、所有者が責任を負う仕組みがあります。
最初にやること
- 連絡をくれた方に折り返す
これが最優先です。何もしないのがいちばん状況を悪くします。
伝えるのは3つだけで足ります。
- 連絡をもらったことへの礼
- 現状を確認すること
- いつまでに対応するか(分からなければ「◯日までに折り返します」)
完璧な回答は要りません。放置されていないと分かるだけで、相手の姿勢は変わります。
- 状態を確認する
遠方で行けない場合は、写真を撮ってもらえないか頼んでみてください。あるいは近くの親戚や、地域の空き家管理業者に見てもらう方法があります。
- 市区町村に連絡が入っていないか確認する
苦情が行政に入っている場合、すでに書面が送られていることがあります。実家宛に届いていると、気づけません。担当課に電話して確認してください。
遠方でも対応できる
現地に行けなくても、たいていの対応は手配できます。
草刈り・剪定
シルバー人材センター、造園業者、便利屋、空き家管理業者。地域によりますが、1回あたり1万〜5万円が目安です。面積と作業量で変わります。
越境している枝と根は、必ず切ってください。民法の改正により、竹木の枝が境界を越えている場合、催告してもなお切除しないときなどには隣地の側で切り取れるようになっていますが、費用を請求される可能性があります。トラブルを避けるには、こちらから対応するのが確実です。
屋根材・外壁材
飛散のおそれがあるなら、応急措置を急いでください。工務店や屋根業者に依頼します。すでに飛んで被害が出ている場合は、火災保険が使えることがあります。証券を確認してください。
ごみ・不法投棄
敷地内に投棄されたごみは、原則として土地の所有者が処分することになります。侵入されにくいよう、門扉の施錠やロープの設置も同時に検討してください。
施錠・侵入対策
窓や勝手口が壊れていると、誰でも入れる状態になります。ベニヤでふさぐ、鍵を交換するなどの応急対応を業者に頼めます。
定期的な管理に切り替える
一度対応しても、放置すればまた同じ苦情が出ます。庭木は伸び、郵便物は溜まります。
空き家管理サービスは月5,000〜10,000円程度から利用できます。月1回の見回り、通風、通水、簡易清掃、郵便物の確認といった内容が一般的です。
費用の内訳と選び方は空き家の管理サービスの月額相場、草刈りだけを頼む場合の費用は空き家の草刈りを業者に頼むと年間いくらかにまとめています。
苦情のたびに対応を続けるのか、手放すのか。判断には手放した場合の金額が必要です。

対応しないとどうなるか
苦情が市区町村に入ると、行政の手続きが始まります。
- 助言・指導 … 状態を改善するよう求められる。この段階では税金は上がらない
- 勧告 … 期限を切って改善を求められる。住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がる
- 命令 … 従わないと50万円以下の過料
- 代執行 … 行政が撤去し、費用を全額請求
参考:空家等対策の推進に関する特別措置法|e-Gov法令検索
1の段階で対応していれば、税金は上がりません。手続きの詳細は特定空家の勧告が来たらどうするにまとめています。
そして、近隣との関係も戻りにくくなります。売却するときに近隣の協力が必要になる場面もあるので、関係を悪化させない対応が結果的に有利に働きます。
続けるか、手放すか
苦情が来たということは、管理が追いついていないという事実が外から見えたということです。
判断材料を並べてください。
| 続ける場合 | 手放す場合 | |
|---|---|---|
| 費用 | 管理費・草刈り・修繕が毎年 | 売却時のみ |
| 手間 | 苦情のたびに対応 | なくなる |
| 税金 | 勧告を受ければ上がる | なくなる |
| 建物 | 傷み続ける | 買主の判断 |
将来住む予定も貸す予定もないなら、管理費を払い続けても資産は増えません。傷むほど売却額は下がります。
傷んだ家でも買い取る業者はあります。まず金額を知ってから判断してください。
【FAQ】空き家の苦情についてよくある質問
Q. 苦情を言われても法的な義務はありますか。
建物の設置や保存に欠陥があり、他人に損害を与えた場合、所有者が責任を負うことがあります。また空家等対策特別措置法にもとづき、適切な管理に努める責務が定められています。
Q. 隣の人が勝手に枝を切ってしまいました。
民法の改正により、一定の要件のもとで隣地の側が枝を切り取れる場合があります。ただし要件があるので、争いになりそうなら弁護士に相談してください。
Q. 匿名の苦情で、誰から言われたか分かりません。
市区町村を通じて連絡が来た場合、相手を教えてもらえないことがあります。その場合は指摘された内容への対応に集中してください。
Q. 相続登記をしていません。誰が対応しますか。
登記が親の名義でも、相続人が所有者として扱われます。共有なら全員に関係します。
Q. 兄弟の共有名義です。誰が費用を出しますか。
相続分に応じた負担が原則です。ただし話し合いで決めることもできます。決めたら記録に残してください。
まとめ
- 苦情は行政手続きの入口。ここで対応すれば助言・指導で止まる
- まず連絡をくれた方に折り返す。完璧な回答は要らない
- 緊急度が高いのは、飛散・倒壊・害獣・不審者・悪臭
- 越境した枝と根は必ず切る。 遠方でも業者に手配できる
- 一度対応しても、管理を入れないとまた同じ苦情が出る
まず折り返しの連絡をしてください。そのうえで、市区町村に書面が届いていないかを確認する。この2つは今日できます。
そして、管理を続けるか手放すかを決めてください。判断には金額が要ります。いま売るといくらかを調べれば、続ける費用と比べられます。査定は無料で、依頼する義務も生じません。
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管理を続ける費用と、いま手放した場合の金額を並べてください。数字が出れば決められます。

