この記事でわかること
- 相続した実家の固定資産税を、法律上は誰が負担するのかがわかる
- 納税通知書が1人にしか届かない理由がわかる
- 立て替えた分を兄弟に請求できるかがわかる
- 揉めないための決め方と、記録の残し方がわかる
親が亡くなって実家を相続したが、まだ名義は親のまま。固定資産税の納税通知書は自分のところにだけ届いている。兄弟は何も言ってこない。
このまま自分が払い続けるしかないのか。
先に整理します。
固定資産税は、相続人全員が相続分に応じて負担するのが原則です。 通知書が1人に届くのは、市区町村が便宜上「代表者」を決めて送っているだけで、その人だけが負担すべきという意味ではありません。
そして、立て替えた分は他の相続人に請求できます。 ただし、記録を残していないと後で証明できません。

なぜ1人にしか届かないのか
固定資産税は、その年の1月1日時点の所有者に課されます。
相続が発生して名義が親のままの場合、実際の所有者は相続人全員です。ところが市区町村は、全員に分割して送るのではなく、相続人代表者指定届などで代表者を1人決めて、その人に通知書をまとめて送ります。
これは事務手続き上の扱いであって、負担の割合を決めるものではありません。
代表者になっている人が誰かは、市区町村の税務課に聞けば分かります。届出をしていない場合、市区町村が調査して勝手に代表者を決めていることもあります。
法律上は誰が負担するのか
相続人が複数いて遺産分割が済んでいない場合、実家は相続人全員の共有です。
固定資産税は、この共有者全員が連帯して納める義務を負います。つまり市区町村から見れば、誰か1人に全額を請求できます。
ただし、相続人の間では話が別です。内部的には、各自の相続分に応じて負担するのが原則になります。
| 相続人 | 法定相続分 | 税額10万円の場合の負担 |
|---|---|---|
| 子2人 | 各2分の1 | 各5万円 |
| 子3人 | 各3分の1 | 各33,333円 |
| 配偶者と子2人 | 配偶者2分の1、子各4分の1 | 配偶者5万円、子各25,000円 |
遺産分割が済んで1人が実家を相続したなら、それ以降はその人の負担です。分割が済むまでの分は、相続分に応じた按分が原則になります。
立て替えた分は請求できる
代表者として払った人は、他の相続人に対して、負担分を請求できます。
必要なのは記録です。
- 納税通知書と領収書を保管する
- 誰が、いつ、いくら払ったかを一覧にしておく
- 支払いのたびに兄弟へ連絡し、記録に残る形で共有する
3つ目が重要です。何年も黙って払い続けたあとで「これまでの分を払ってほしい」と言うと、揉めます。「なぜ今まで言わなかったのか」「そんな話は聞いていない」となるためです。
払った時点でメールかLINEで一報を入れておけば、それが記録になります。文面は短くて構いません。
今年の固定資産税◯◯円を立て替えました。相続分に応じて後日精算させてください。領収書は保管しています。
なお、請求できる期間には時効があります。何年も放置せず、少なくとも年に一度は共有してください。
揉めないための決め方
遺産分割が終わるまでの間、次の3点を先に決めておくと後が楽です。
- 誰が代表として払うか
実家の近くに住んでいる人、あるいは通帳を管理している人が担うことが多くあります。
- 精算のタイミング
その都度精算するか、遺産分割のときにまとめて清算するか。まとめる場合、金額が大きくなるので記録がより重要になります。
- 実家を最終的にどうするか
ここが決まらないと、税金だけが毎年発生し続けます。持ち続けるのか、売るのか、期限を決めてください。
先延ばしにした場合の損失は実家を売るのを先延ばしにするといくら損するかで計算しています。
誰が払うかで揉めているなら、手放した場合の金額を出すと話が動きます。負担そのものがなくなるためです。

相続財産から払う方法
自分の財布から出す前提で考える必要はありません。
親に預貯金が残っているなら、そこから支払うのが本来の形です。口座が凍結されていても、遺産分割前に一定額を引き出せる制度があります。
参考:預貯金の払戻し制度|法務省
この方法なら、誰が立て替えるかで揉める場面自体がなくなります。相続財産から出れば、実質的に相続分に応じた負担になるためです。
払わないとどうなるか
誰も払わずに放置すると、延滞金が加算されます。督促を経て、最終的には財産の差押えに進みます。
差し押さえられるのは実家だけとは限りません。連帯して納める義務があるため、代表者個人の給与や預金が対象になることがあります。
兄弟が払わないからといって自分も払わない、という対応はおすすめできません。まず自分の負担分だけでも納めて、記録を残しながら精算を求めるほうが安全です。
相続登記は義務化されている
名義が親のままの状態は、いずれ解消する必要があります。
相続登記は義務化されており、正当な理由なく期限内に申請しないと過料の対象になります。名義を整理しないと、売却もできません。
手続きの進め方は実家の名義を親のまま放置している兄弟へにまとめています。
【FAQ】相続した実家の固定資産税についてよくある質問
Q. 代表者を変更できますか。
できます。市区町村に相続人代表者指定届を提出すれば変更されます。負担の話とは別に、事務的な窓口を移すだけです。
Q. 実家に住んでいる兄弟がいます。その人が全額払うべきではないですか。
住んでいる人が使用しているという事情はありますが、所有者としての負担義務は相続分に応じたものです。ただし話し合いで「住んでいる人が全額」と決めることは可能です。決めたら文書に残してください。
Q. 遺産分割で実家を相続しないことになりました。過去の分はどうなりますか。
分割が確定するまでの期間について、相続人として負担すべき分が存在します。清算の対象になるので、遺産分割の際に一緒に整理してください。
Q. 兄弟と連絡が取れません。
まず内容証明などで連絡を試みてください。所在が分からない場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。
Q. 相続放棄をすれば払わなくて済みますか。
済みます。ただし期限は3ヶ月で、遺品や預貯金に手をつけていないことが条件です。
まとめ
- 固定資産税は相続人全員が相続分に応じて負担するのが原則
- 通知書が1人に届くのは事務上の扱い。その人だけの負担という意味ではない
- 立て替えた分は請求できる。ただし記録が必要
- 払ったらその都度、記録に残る形で兄弟に共有する
- 親の預貯金から払えば、立替で揉める場面自体がなくなる
まず市区町村の税務課に電話して、誰が代表者になっているかと、税額がいくらかを確認してください。そのうえで兄弟へ一報を入れる。ここまでは今日できます。
そして、実家を最終的にどうするかの期限を決めてください。決まらないまま毎年払い続けるのが、いちばん損をします。
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