この記事でわかること
- 共有名義で1人が反対しているとき、何ができて何ができないかがわかる
- 反対の理由ごとに、崩し方が変わることがわかる
- 話し合いがまとまらない場合の法的な手段がわかる
- 自分の持分だけを売る選択肢がわかる
実家を売りたいが、兄が反対している。共有名義なので勝手に進められない。このまま固定資産税だけ払い続けるのか。
先に整理します。
共有不動産の全体を売るには、共有者全員の同意が必要です。 1人でも反対すれば、その方法では売れません。
ただし、打つ手がなくなるわけではありません。 自分の持分だけを売る、持分を買い取ってもらう、共有物分割請求という制度を使う。この3つが残っています。
そして実務上、いちばん動くのは金額を出すことです。反対の理由の多くは、感情ではなく「決められない」ことにあります。
反対されている段階でも査定は取れます。共有者の同意がなくても金額は分かります。

共有名義でできること・できないこと
| 行為 | 必要な同意 |
|---|---|
| 保存行為(修繕、草刈りなど) | 単独でできる |
| 管理行為(3年以内の賃貸など) | 持分の過半数 |
| 変更・処分(売却、建て替え、解体) | 全員の同意 |
| 自分の持分だけを売る | 単独でできる |
売却は全員の同意が必要です。一方で、自分の持分を売ることは、他の共有者の同意なしにできます。
なお、2023年4月の民法改正で、共有物の管理に関するルールが整理され、所在の分からない共有者がいる場合の手続きなども設けられました。
参考:民法(共有)|e-Gov法令検索
反対の理由で対応が変わる
まず、なぜ反対しているのかを聞いてください。理由によって崩し方が違います。
「思い出があるから手放したくない」
感情が理由の場合、金額の話をしても動きません。
有効なのは、持ち続けた場合の負担を具体的な数字で示すことです。年間の固定資産税、火災保険、草刈り、管理費。合計すると年20万円を超える家は珍しくありません。10年で200万円です。
そして「その費用を誰が払い続けるのか」を聞いてください。反対している人が全額を負担すると言うなら、それも一つの解決です。
「もっと高く売れるはずだ」
相場観の違いが理由なら、査定を取れば解決します。1社ではなく複数社の査定を並べてください。 1社だと「その会社が安く見積もっただけだ」と言われて終わります。
「今は決められない」
先送りが理由の場合、期限を示すのが有効です。相続税の申告期限、空き家の3000万円特別控除の3年、取得費加算の3年10ヶ月。期限を過ぎると手取りが数百万円変わることがあります。
期限の詳細は相続した家はいつまでに売れば税金が安いかにまとめています。
「自分が住むかもしれない」
いつまでに決めるかを聞いてください。期限のない可能性を理由に、他の共有者が負担を続ける理由はありません。
「◯年◯月までに決める。それまでの費用は住む予定の人が負担する」という形にできれば、双方が納得しやすくなります。
話し合いがまとまらない場合
1. 自分の持分を売る
他の共有者の同意なしにできます。持分だけを買い取る専門の業者があります。
ただし、金額は大きく下がります。買った側も単独では自由に使えないためです。相場の3割から5割程度になることが多くあります。
そして、買い取った業者が他の共有者に対して分割請求を起こすことがあります。結果として親族間の関係が決定的に悪くなる可能性があります。最後の手段と考えてください。
2. 他の共有者に持分を買い取ってもらう
反対している人が家を残したいなら、これがいちばん穏当です。「残したいなら、私の持分を買い取ってほしい」と提案します。
相手が買えないなら、残す主張の根拠は弱くなります。
3. 共有物分割請求
裁判所に申し立てる制度です。話し合いで決まらない場合、最終的にこの手続きで解決できます。
裁判所が命じる分割方法は3つです。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 現物分割 | 土地を物理的に分ける。建物がある場合は難しい |
| 賠償分割 | 誰か1人が取得し、他の共有者に金銭を支払う |
| 換価分割 | 競売にかけて代金を分ける |
まず調停、まとまらなければ訴訟という流れです。期間は1年以上かかることがあり、弁護士費用も発生します。
そして競売になると、通常の売却より価格が大きく下がります。この点を共有者に伝えると、話し合いに戻ることがあります。
「もっと高く売れるはずだ」と言われたら、複数社の査定を並べてください。1社では反論の材料になりません。

話を動かすためにやること
まず査定を取ってください。
反対されている段階でも、査定は取れます。共有者の同意がなくても、金額を知ることはできます。
金額が出ると、次のことが具体的になります。
- 売った場合に一人あたりいくら手に入るか
- 持分を買い取ってもらう場合の金額はいくらか
- 持ち続けた場合、年間いくら払い続けるのか
感情で話している限り結論は出ません。数字が出た時点で、判断の土俵に乗ります。
そして、複数社の査定を並べてください。1社だけだと相場観の違いを埋められません。
【FAQ】共有名義の実家の売却についてよくある質問
Q. 持分の過半数を持っていれば売れますか。
売れません。売却は変更・処分にあたるため、持分の割合にかかわらず全員の同意が必要です。
Q. 兄弟が連絡に応じません。
内容証明郵便で意思を伝えたうえで、応じない場合は共有物分割請求に進むことになります。所在が分からない場合の手続きも用意されています。
Q. 固定資産税を一人で払っています。取り戻せますか。
他の共有者に対して、持分に応じた負担を求められます。領収書と支払いの記録を残しておいてください。詳しくは相続した実家の固定資産税は兄弟の誰が払うかにあります。
Q. 共有名義を解消する方法はありますか。
誰か1人が他の持分を買い取る、売却して分ける、共有物分割請求のいずれかです。放置しても解消されません。
Q. 相続のときに共有にしなければよかったのですが。
いま解消できます。遅くなるほど相続人が増えて難しくなるので、早いほうが有利です。
まとめ
- 共有不動産の売却には全員の同意が必要。1人の反対で止まる
- 自分の持分だけなら単独で売れる。ただし金額は大きく下がる
- 反対の理由が感情か、相場観か、先送りかで対応が変わる
- 最終手段は共有物分割請求。ただし1年以上かかり、競売なら価格が下がる
- 話を動かすのは金額。査定を取れば判断の土俵に乗る
まず査定を取ってください。共有者の同意がなくても、金額を知ることはできます。
そのうえで、売った場合に一人あたりいくらか、持ち続けると年いくらかかるかを並べて示す。感情で止まっている話も、数字が出ると動き始めます。
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