この記事でわかること
- 空き家を放置した年数ごとに、何が起きるかが順番でわかる
- どの時点までなら取り返しがつくかがわかる
- 法律上の期限が3つあることがわかる
- 放置を続けた場合の総額を計算できる
実家が空き家になって数年が経つ。特に困っていないので、そのままにしている。
いつまでなら大丈夫なのか。
先に答えを言います。法律上「何年まで」という期限はありません。 ただし、放置した年数に応じて起きることは、ほぼ決まっています。
そして、期限が決まっているものが3つあります。 相続登記の義務、税の特例、相続放棄。この3つだけは、過ぎると取り返せません。
年数ごとに何が起きるかを並べます。
放置する年数が決まらないのは、手放した場合の金額を知らないからです。まず数字を出してください。

年数ごとに起きること
| 経過 | 起きること |
|---|---|
| 3ヶ月 | 相続放棄の期限。負債があっても放棄できなくなる |
| 半年〜1年 | 換気されず湿気がこもる。カビ、排水口からの臭気。庭木が伸びる |
| 1〜2年 | 郵便物が溜まり、空き家と分かる状態になる。近隣から苦情が出始める |
| 3年 | 空き家の3000万円特別控除の期限。要件に該当していても使えなくなる |
| 3年10ヶ月 | 相続税の取得費加算の特例の期限 |
| 3年(相続を知った日から) | 相続登記の申請義務の期限。正当な理由なく怠ると過料の対象 |
| 3〜5年 | 雨漏り、シロアリ、小動物の侵入。修繕費が発生し始める |
| 5年〜 | 助言・指導、勧告へ進む可能性。勧告を受ければ固定資産税が上がる |
| 10年〜 | 建物として評価されず、解体前提の土地としてしか売れなくなる |
上の3つが法律の期限、下の5つが物理的な劣化です。
取り返せない3つの期限
- 相続放棄は3ヶ月
自分が相続人だと知ったときから3ヶ月です。この期間を過ぎると、原則として放棄できません。借金や滞納があった場合、それも引き継ぎます。
なお、遺品や預貯金に手をつけると、その時点で放棄できなくなることがあります。詳しくは相続放棄をする前に、遺品に触っていいのかにまとめています。
- 相続登記は3年
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、登記を申請する義務があります。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
義務化される前に相続した不動産も対象になっています。「昔のことだから関係ない」とはなりません。
参考:不動産登記法|e-Gov法令検索
- 税の特例は3年と3年10ヶ月
空き家の3000万円特別控除は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。相続税の取得費加算の特例は、相続開始から実質3年10ヶ月です。
どちらも要件が細かいので、該当しそうなら期限が来る前に税理士に確認してください。金額は実家を売るのを先延ばしにするといくら損するかで計算しています。
物理的な劣化は止まらない
人が住まなくなった家は、住んでいる家より傷むのが早くなります。
理由は換気です。窓が開かないため湿気がこもり、カビが発生し、木部が傷みます。排水口の封水が蒸発すると、下水の臭気が上がってきます。
そこから順に進みます。
- 庭木と雑草が伸び、隣地や道路にはみ出す
- 郵便受けが溢れ、外から空き家と分かる状態になる
- 雨樋が詰まり、雨水が外壁を伝って劣化を早める
- 屋根材や外壁材が浮き、雨漏りが始まる
- シロアリ、ネズミ、ハクビシンなどが侵入する
- 窓や扉が壊れ、誰でも入れる状態になる
このうち「雨漏り」が転換点です。ここから先は劣化が加速し、修繕費が跳ね上がります。
近隣とのトラブル
物理的な劣化より先に来ることがあります。
- 庭木が越境している
- 雑草で害虫が発生している
- 落ち葉やごみが飛んでくる
- 不審者が出入りしている
- 台風で屋根材が飛んできた
苦情が市区町村に入ると、そこから行政の手続きが始まります。助言・指導が届き、対応しなければ勧告へ進みます。勧告を受けると固定資産税が上がります。
苦情が来たときの対応は空き家に近所から苦情が来たときにまとめています。
放置し続けた場合の総額
計算してみてください。
放置の総額
=(固定資産税 + 火災保険 + 光熱費の基本料金 + 管理費 + 交通費)× 年数
+ 発生した修繕費
+ 建物の劣化による売却額の下落
+ 期限切れで使えなくなった特例の分
年間の維持費が20万円なら、5年で100万円です。そこに修繕費と、売却額の下落が乗ります。
放置している間、資産は増えません。減り続けます。
毎年の維持費と、いま手放した場合の金額。この2つを並べると、あと何年持てるかが見えます。

どこまでなら取り返しがつくか
まだ大丈夫な段階
雨漏りがなく、建物の傾きもなく、苦情も来ていない。この段階なら、管理を入れて維持するか、売却するかを選べます。
急いだほうがいい段階
助言・指導の書面が届いた。雨漏りが始まった。近隣から苦情が来た。このどれかがあれば、判断を先送りしないでください。次の段階に進むと選択肢が減ります。
選択肢が限られる段階
勧告を受けた。建物が傾いている。誰でも入れる状態になっている。この段階では、解体か、そのまま買い取ってもらうかに絞られます。
いま確認しておくこと
売る決心がついていなくても、次の4つは今日確認できます。
- 相続開始日はいつか(3年と3年10ヶ月の期限が決まる)
- 相続登記は済んでいるか
- 市区町村から書面が届いていないか(実家宛に届いている可能性がある)
- いま売るとしたらいくらか
3番は見落としがちです。郵便物の転送手続きをしていないと、助言・指導の書面が実家に届いたまま気づかないことがあります。
【FAQ】空き家の放置についてよくある質問
Q. 年に数回は換気に行っています。それでも劣化しますか。
進行は遅くなりますが止まりません。月1回程度の通風があれば、かなり差が出ます。
Q. 誰も住んでいないと火災保険に入れませんか。
住宅物件ではなく一般物件として扱われ、保険料が上がるか、引受を断られることがあります。契約中の保険がそのまま有効かどうかは、保険会社に確認してください。
Q. 電気と水道は止めたほうがいいですか。
止めると換気や清掃ができなくなり、管理業者にも頼みにくくなります。基本料金は年1〜2万円程度なので、残す人が多くあります。
Q. 相続登記の3年を過ぎてしまいました。
すぐに申請してください。過料は必ず科されるものではなく、正当な理由があれば考慮されます。放置を続けるほど不利になります。
Q. 売れない家です。それでも何かできますか。
引き取り手を探す方法があります。売れない物件を専門に扱う業者もあります。
まとめ
- 法律上「何年まで」という期限はない。ただし期限が決まっているものが3つある
- 相続放棄は3ヶ月、相続登記は3年、税の特例は3年と3年10ヶ月
- 物理的な劣化の転換点は雨漏り。ここから修繕費が跳ね上がる
- 苦情が市区町村に入ると、助言・指導から勧告へ進む
- 放置している間、資産は増えない。維持費を払いながら価値が下がる
まず相続開始日を確認して、3年の期限がいつ来るかを把握してください。それだけで、残り時間が見えます。
そのうえで、実家宛に市区町村からの書面が届いていないかを確認する。この2つは今日できます。判断はそのあとで構いません。
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